地域おこしは、みんなのもの。土地と人と関わり合う、はじまりの旅を広めたい (3)

離島、農山漁村

村おこしNPO法人 ECOFF

マーケティング基礎調査

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プロボノチームは、5地域への調査訪問を前に、プロジェクトの2つの目標(①活動地域を広げるため、地域と参加者を橋渡しする「親善大使」を新設・募集/②社会人の参加を想定した短期プログラム「村おこし旅」の設計)の背景やねらいについて、ECOFF代表の宮坂大智さん、理事の山田文香さんから聞き取りをしました。

まず「親善大使」に期待するのは、旅する参加者と、受け入れる現地世話人との架け橋となること。その役割を普段は、都市暮らしで本業に就きながら、各々愛着ある地域を持つ人たちに担ってほしい。自身とその地域との関わり合いに、「親善大使」の立場を活かしてほしいとECOFFは考えています。

「村おこし旅」は、現行の「村おこしボランティア」が10日間という日程ゆえ参加が困難な社会人を対象に、短期日程での開催を想定しています。限られた日数の中で、ECOFFの理念である「誰もが参加できる地域おこし」を具現化するには、地域の人たちとの間にどう親密な関係を築いていけばよいか。この場合、“ボランティア”はプログラムの柱になりづらいだろうと予測し、そこに課題があると考えています。

この聞き取りの結果も踏まえ、プロボノチームの現地訪問の主目的は、

  • 現地世話人及びECOFFの活動関係者の思いを対面で確認 (地域の課題・魅力・展望について/ECOFFの活動のやりがい・問題点について/「村おこし旅」「親善大使」への意見)
  • 2泊3日の滞在を通しての「村おこし旅」シミュレーション

の2点におかれることに。塚田芙貴子(ふっきー)さんと野上優子(Yuko)さんは大分県屋形島へ、吉田三紀(よしみき)さんと日比野理人(あやとん)さんは東京都三宅島へ、田中さとみ(さとみん)さんと川崎豪久(デッサ)さんは北海道奥尻島へ、増永容啓(やす)さんと安藤剛平(アンディ)さんは鹿児島県種子島へ、實廣亜希子(じっちゃん)さんと佐藤弘樹(ひろき)さんは岩手県三陸漁場へと、順次赴きました。

ここでは「村おこし旅」の発案者であるECOFFの山田文香さんが生活する、鹿児島県種子島への訪問をレポートします。

種子島の夜明け

また、ここに帰ってきてくれる子たち

種子島を訪れたプロボノワーカーの増永さん、安藤さんは、迎えた山田さんの案内で島の観光体験もしつつ、ECOFFの活動に関わるさまざまな立場の人たちからヒアリング。対象は、2017年に島へ移住した山田さん、昨年、その山田さんから現地世話人を引き継いだ山下英隆さん、マリンアクティビティ提供者、役場職員、宿泊施設オーナー、そして「村おこしボランティア」の参加者を現場に受け入れてきた農業者の人たちです。

種子島では、「村おこしボランティア」の全10日間のうち、ボランティアの受け入れは農家1件あたり数日ずつ。これは“労働力”ととらえるのに十分な日数とはいえず、ヒアリングからは「ボランティアのボランティア(ボランティアに来る参加者を受け入れるボランティア)」という側面が少なからずあることもわかりました。それでもなお、好意的に受け入れ続けてきた農業者の人々や、新旧の世話人の声から浮き彫りになったのは、「数カ月後にまた、ここに帰ってきてくれる子がたくさんいる」「人手を求めているわけじゃない。島を好きになり、何かを得てくれたらいい」など、金銭や労働力には替えられない意義が見出されていること。これから社会に出ていく年若い参加者に対し、何かしら「気づいてほしい」「感じとってほしい」思いが寄せられていることでした。

このことは、プロボノチームにとって「ECOFFのスタッフだけでなく、地域の方たちにもそういう価値感があると知れてよかった」(安藤さん)、「お金ではなく『島をよくしたい。知ってほしい』という思いの部分で、島の人たちとも合意できる企画をつくれそう」(増永さん)と、展望が開けるきっかけとなっていきました。

世話人からも参加者からも親しみをこめて「みっちーさん」と呼ばれる古市道則さんは、仏事に用いる「しきみ」などの植物の生産者。種子島で「村おこしボランティア」が始まった当初から受け入れをおこない、「今までに100人くらいの大学生を受け入れたかな。孫が来るみたいなものです。みんな『また来るねー』といって帰っていく」
一家で参加者の受け入れをおこなってきた西園農園で、安納芋の出荷作業を手伝う増永さん(左から2人目)と安藤さん(3人目)。休憩中、お手製の焼き芋をごちそうになりながら、農薬や化学肥料に頼らない生産の必要性や、日本の食糧自給率について語り合った。この時間が「村おこし旅」の貴重なヒントに。

「観光」と「移住」の間の可能性

増永さん、安藤さんがヒアリングから見出したのは、ヒアリングと称したその会話自体に、「村おこし旅」の可能性が潜んでいること。つまり、地域の人々と膝を交えて話す時間こそが、短期間の旅の中に「地域おこし」の一歩を刻み得るのではないか、との仮説でした。では、そのような旅に関心を抱くのはどんな人たちか。滞在中、ECOFFの山田さんと議論する中で指針となったのが、島への移住者である山田さん自身の歩みでした。

仕事へのもやもやを抱えていた京都での前職時代、石垣島へのリフレッシュ旅をきっかけに“島”の自然や文化に魅了されていった山田さんは、休暇のたびに島々を巡る中、ECOFFのプログラムの一参加者として鹿児島県宝島を訪れます。

「このとき出会った宝島の世話人の方は、埼玉からの移住者。昼は農作業をして、夜は夜で島の仲間と農作物の商品化について議論し、オンもオフもなく生きることに熱中している。その姿や、島の人たちの“生活する力”にカルチャーショックを受けたんです。都会ではすべてが分業制ですが、宝島では港に船が着けば青年部の人たちみんなで荷下ろしをする。道路掃除もみんなでするし、水道や電気の修理も、宅急便の配達も。離島ゆえの制限も多いけれど、だからこそ“生きる”と“働く”がリンクしている。そこが面白く、自分もこうなりたい、と」

島で暮らすということが、自分の選択肢となり得るのかを試してみたい思いに駆られた山田さんは、本業のかたわら、ECOFFのボランティアスタッフとして働き始めます。その決断が種子島移住へとつながっていくのですが、この歩みには3つのフェーズがあったとプロボノチームは分析します。石垣島への旅を思い立ったフェーズ1。宝島と出会い、移住への意志が芽生えたフェーズ3。その間の「島好き」で「観光では知れないことを知りたい旅人」だったフェーズ2の山田さんこそが、「話す」ことを主軸とした旅のターゲット層となり得るのではないか……。この仮説には、当の山田さんも「とてもしっくりくる」と賛同。増永さん、安藤さんにとっても、旅のコンセプト策定への貴重な情報となりました。

この種子島をはじめ、5つの訪問地でそれぞれ生の情報に触れて持ち帰ったプロボノチーム。約半月後の中間報告会へ向け、分析と議論を具体化していきます。

3日間を終え、「プロボノチームのお2人に、この島で私が会ってほしかった方たちに会ってもらい、知ってもらって、ここから縁がつながっていくのだろうなと感じることができました。『村おこし旅』の一歩目になった気がします」と語った山田文香さん(中)と、増永さん(左)、安藤さん(右)。

【プロジェクト進展】
10月4日 プロボノチーム初顔合わせ(オンライン)
10月5日 団体とプロボノチームによるキックオフミーティング(オンライン)
10月14日〜11月10日 チーム週次ミーティング(オンライン)
10月18日・28日・11月4日 ECOFFスタッフヒアリング(オンライン)
10月30日〜11月1日 大分県屋形島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
10月31日〜11月2日 東京都三宅島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
11月1日〜3日 北海道奥尻島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
11月7日〜10日 鹿児島県種子島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
11月13日〜15日 岩手県三陸漁場訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)

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村おこしNPO法人ECOFF(以下、ECOFF)が、これまでにボランティアプログラムを開催してきた地域は32カ所(一部海外)に及ぶ。10人のプロボノワーカーは、このうち、北は北海道奥尻島から、南は鹿児島県種子島までの5地域を分担して訪問。今後、新たに地域との橋渡し役を担う「親善大使」の募集と、社会人を対象として設計する「村おこし旅」の可能性を探る。各々旅好きなメンバーが集ったこのチームは、現地での見聞からどんな方向性を見出すのか。

プロボノチーム

ふっきーさん(プロジェクトマネジャー)

プロボノ活動は初。人と人との交流の拡大が人生のテーマの一つ。「仕事以外の形でも誰かに喜んでもらうことができたらうれしいです」

やすさん(マーケッター)

子どもの離島留学をきっかけに離島の魅力と大変さを知る。「お世話になっている離島とECOFFをつなぎ、お互いにとってよりよい未来にできたらうれしい」

アンディさん(マーケッター)

NPOやソーシャルビジネスのブランディング・マーケティングの経験を積みたいと思い、参加。「地域活性とボランティアの掛け合わせに興味があります」

ひろきさん(マーケッター)

学生時代に数十回訪れた農山村地域や離島の課題解決に関心があり、実践の場を求めて参加。「課題解決に少しでも貢献できればと思います」

じっちゃん(マーケッター)

プロボノ活動は自分の経験や行動で社会に貢献できるすてきな活動だと思い、参加。「関わった方に喜んでいただくのが一番。Happyを生み出すのに全力を尽くします」

さとみんさん(マーケッター)

海外で予定されていた活動がコロナの影響で実現せず、日本の地域に貢献できることをと思い参加。「島の暮らしや文化が持続されるような仕組みづくりに貢献したい」

Yukoさん(マーケッター)

昨年初めてプロボノを知り、自分でも役立てる仕事があるのではと思い参加。「その土地が持っているよいところを伸ばし、活性化するお手伝いができれば」

よしみきさん(マーケッター)

本業では環境や社会、従業員に配慮した企業づくりのコンサルや編集を手がける。プロボノ活動は3度目。「いろいろな方と関われることを楽しみにしています」

デッサさん(マーケッター)

プロボノ活動は初。将来的に、出身の離島に役立つ活動をしたいとの思いで参加。「地元の活性に役立てられるような経験を身につけたい」

あやとんさん(マーケッター)

本業では地域の観光支援を手がける。仕事とプライベート以外の第3の時間の使い方として参加。「自分の力を使って離島のお手伝いをしたい」

地域団体

地域概要

これまで活動してきた地域は、国内、一部海外の32地域(活動休止中の地域を含む)。離島をはじめ、大都市から離れたエリアが多い。

団体概要

2010年に活動を開始し、2011年にNPO法人化。主要事業は、住み込み型のボランティア旅「村おこしボランティア」の企画運営。

プロジェクト概要

活動地域と参加者の間で橋渡し役を務める「親善大使(仮称)」の募集要項作成。社会人を対象とする「村おこし旅(仮称)」の企画立案。

村おこしNPO法人ECOFF(以下、ECOFF)が、これまでにボランティアプログラムを開催してきた地域は32カ所(一部海外)に及ぶ。10人のプロボノワーカーは、このうち、北は北海道奥尻島から、南は鹿児島県種子島までの5地域を分担して訪問。今後、新たに地域との橋渡し役を担う「親善大使」の募集と、社会人を対象として設計する「村おこし旅」の可能性を探る。各々旅好きなメンバーが集ったこのチームは、現地での見聞からどんな方向性を見出すのか。

プロボノチーム

ふっきーさん(プロジェクトマネジャー)

プロボノ活動は初。人と人との交流の拡大が人生のテーマの一つ。「仕事以外の形でも誰かに喜んでもらうことができたらうれしいです」

やすさん(マーケッター)

子どもの離島留学をきっかけに離島の魅力と大変さを知る。「お世話になっている離島とECOFFをつなぎ、お互いにとってよりよい未来にできたらうれしい」

アンディさん(マーケッター)

NPOやソーシャルビジネスのブランディング・マーケティングの経験を積みたいと思い、参加。「地域活性とボランティアの掛け合わせに興味があります」

ひろきさん(マーケッター)

学生時代に数十回訪れた農山村地域や離島の課題解決に関心があり、実践の場を求めて参加。「課題解決に少しでも貢献できればと思います」

じっちゃん(マーケッター)

プロボノ活動は自分の経験や行動で社会に貢献できるすてきな活動だと思い、参加。「関わった方に喜んでいただくのが一番。Happyを生み出すのに全力を尽くします」

さとみんさん(マーケッター)

海外で予定されていた活動がコロナの影響で実現せず、日本の地域に貢献できることをと思い参加。「島の暮らしや文化が持続されるような仕組みづくりに貢献したい」

Yukoさん(マーケッター)

昨年初めてプロボノを知り、自分でも役立てる仕事があるのではと思い参加。「その土地が持っているよいところを伸ばし、活性化するお手伝いができれば」

よしみきさん(マーケッター)

本業では環境や社会、従業員に配慮した企業づくりのコンサルや編集を手がける。プロボノ活動は3度目。「いろいろな方と関われることを楽しみにしています」

デッサさん(マーケッター)

プロボノ活動は初。将来的に、出身の離島に役立つ活動をしたいとの思いで参加。「地元の活性に役立てられるような経験を身につけたい」

あやとんさん(マーケッター)

本業では地域の観光支援を手がける。仕事とプライベート以外の第3の時間の使い方として参加。「自分の力を使って離島のお手伝いをしたい」

地域団体

地域概要

これまで活動してきた地域は、国内、一部海外の32地域(活動休止中の地域を含む)。離島をはじめ、大都市から離れたエリアが多い。

団体概要

2010年に活動を開始し、2011年にNPO法人化。主要事業は、住み込み型のボランティア旅「村おこしボランティア」の企画運営。

プロジェクト概要

活動地域と参加者の間で橋渡し役を務める「親善大使(仮称)」の募集要項作成。社会人を対象とする「村おこし旅(仮称)」の企画立案。

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プロボノチームは、5地域への調査訪問を前に、プロジェクトの2つの目標(①活動地域を広げるため、地域と参加者を橋渡しする「親善大使」を新設・募集/②社会人の参加を想定した短期プログラム「村おこし旅」の設計)の背景やねらいについて、ECOFF代表の宮坂大智さん、理事の山田文香さんから聞き取りをしました。

まず「親善大使」に期待するのは、旅する参加者と、受け入れる現地世話人との架け橋となること。その役割を普段は、都市暮らしで本業に就きながら、各々愛着ある地域を持つ人たちに担ってほしい。自身とその地域との関わり合いに、「親善大使」の立場を活かしてほしいとECOFFは考えています。

「村おこし旅」は、現行の「村おこしボランティア」が10日間という日程ゆえ参加が困難な社会人を対象に、短期日程での開催を想定しています。限られた日数の中で、ECOFFの理念である「誰もが参加できる地域おこし」を具現化するには、地域の人たちとの間にどう親密な関係を築いていけばよいか。この場合、“ボランティア”はプログラムの柱になりづらいだろうと予測し、そこに課題があると考えています。

この聞き取りの結果も踏まえ、プロボノチームの現地訪問の主目的は、

  • 現地世話人及びECOFFの活動関係者の思いを対面で確認 (地域の課題・魅力・展望について/ECOFFの活動のやりがい・問題点について/「村おこし旅」「親善大使」への意見)
  • 2泊3日の滞在を通しての「村おこし旅」シミュレーション

の2点におかれることに。塚田芙貴子(ふっきー)さんと野上優子(Yuko)さんは大分県屋形島へ、吉田三紀(よしみき)さんと日比野理人(あやとん)さんは東京都三宅島へ、田中さとみ(さとみん)さんと川崎豪久(デッサ)さんは北海道奥尻島へ、増永容啓(やす)さんと安藤剛平(アンディ)さんは鹿児島県種子島へ、實廣亜希子(じっちゃん)さんと佐藤弘樹(ひろき)さんは岩手県三陸漁場へと、順次赴きました。

ここでは「村おこし旅」の発案者であるECOFFの山田文香さんが生活する、鹿児島県種子島への訪問をレポートします。

種子島の夜明け

また、ここに帰ってきてくれる子たち

種子島を訪れたプロボノワーカーの増永さん、安藤さんは、迎えた山田さんの案内で島の観光体験もしつつ、ECOFFの活動に関わるさまざまな立場の人たちからヒアリング。対象は、2017年に島へ移住した山田さん、昨年、その山田さんから現地世話人を引き継いだ山下英隆さん、マリンアクティビティ提供者、役場職員、宿泊施設オーナー、そして「村おこしボランティア」の参加者を現場に受け入れてきた農業者の人たちです。

種子島では、「村おこしボランティア」の全10日間のうち、ボランティアの受け入れは農家1件あたり数日ずつ。これは“労働力”ととらえるのに十分な日数とはいえず、ヒアリングからは「ボランティアのボランティア(ボランティアに来る参加者を受け入れるボランティア)」という側面が少なからずあることもわかりました。それでもなお、好意的に受け入れ続けてきた農業者の人々や、新旧の世話人の声から浮き彫りになったのは、「数カ月後にまた、ここに帰ってきてくれる子がたくさんいる」「人手を求めているわけじゃない。島を好きになり、何かを得てくれたらいい」など、金銭や労働力には替えられない意義が見出されていること。これから社会に出ていく年若い参加者に対し、何かしら「気づいてほしい」「感じとってほしい」思いが寄せられていることでした。

このことは、プロボノチームにとって「ECOFFのスタッフだけでなく、地域の方たちにもそういう価値感があると知れてよかった」(安藤さん)、「お金ではなく『島をよくしたい。知ってほしい』という思いの部分で、島の人たちとも合意できる企画をつくれそう」(増永さん)と、展望が開けるきっかけとなっていきました。

世話人からも参加者からも親しみをこめて「みっちーさん」と呼ばれる古市道則さんは、仏事に用いる「しきみ」などの植物の生産者。種子島で「村おこしボランティア」が始まった当初から受け入れをおこない、「今までに100人くらいの大学生を受け入れたかな。孫が来るみたいなものです。みんな『また来るねー』といって帰っていく」
一家で参加者の受け入れをおこなってきた西園農園で、安納芋の出荷作業を手伝う増永さん(左から2人目)と安藤さん(3人目)。休憩中、お手製の焼き芋をごちそうになりながら、農薬や化学肥料に頼らない生産の必要性や、日本の食糧自給率について語り合った。この時間が「村おこし旅」の貴重なヒントに。

「観光」と「移住」の間の可能性

増永さん、安藤さんがヒアリングから見出したのは、ヒアリングと称したその会話自体に、「村おこし旅」の可能性が潜んでいること。つまり、地域の人々と膝を交えて話す時間こそが、短期間の旅の中に「地域おこし」の一歩を刻み得るのではないか、との仮説でした。では、そのような旅に関心を抱くのはどんな人たちか。滞在中、ECOFFの山田さんと議論する中で指針となったのが、島への移住者である山田さん自身の歩みでした。

仕事へのもやもやを抱えていた京都での前職時代、石垣島へのリフレッシュ旅をきっかけに“島”の自然や文化に魅了されていった山田さんは、休暇のたびに島々を巡る中、ECOFFのプログラムの一参加者として鹿児島県宝島を訪れます。

「このとき出会った宝島の世話人の方は、埼玉からの移住者。昼は農作業をして、夜は夜で島の仲間と農作物の商品化について議論し、オンもオフもなく生きることに熱中している。その姿や、島の人たちの“生活する力”にカルチャーショックを受けたんです。都会ではすべてが分業制ですが、宝島では港に船が着けば青年部の人たちみんなで荷下ろしをする。道路掃除もみんなでするし、水道や電気の修理も、宅急便の配達も。離島ゆえの制限も多いけれど、だからこそ“生きる”と“働く”がリンクしている。そこが面白く、自分もこうなりたい、と」

島で暮らすということが、自分の選択肢となり得るのかを試してみたい思いに駆られた山田さんは、本業のかたわら、ECOFFのボランティアスタッフとして働き始めます。その決断が種子島移住へとつながっていくのですが、この歩みには3つのフェーズがあったとプロボノチームは分析します。石垣島への旅を思い立ったフェーズ1。宝島と出会い、移住への意志が芽生えたフェーズ3。その間の「島好き」で「観光では知れないことを知りたい旅人」だったフェーズ2の山田さんこそが、「話す」ことを主軸とした旅のターゲット層となり得るのではないか……。この仮説には、当の山田さんも「とてもしっくりくる」と賛同。増永さん、安藤さんにとっても、旅のコンセプト策定への貴重な情報となりました。

この種子島をはじめ、5つの訪問地でそれぞれ生の情報に触れて持ち帰ったプロボノチーム。約半月後の中間報告会へ向け、分析と議論を具体化していきます。

3日間を終え、「プロボノチームのお2人に、この島で私が会ってほしかった方たちに会ってもらい、知ってもらって、ここから縁がつながっていくのだろうなと感じることができました。『村おこし旅』の一歩目になった気がします」と語った山田文香さん(中)と、増永さん(左)、安藤さん(右)。

【プロジェクト進展】
10月4日 プロボノチーム初顔合わせ(オンライン)
10月5日 団体とプロボノチームによるキックオフミーティング(オンライン)
10月14日〜11月10日 チーム週次ミーティング(オンライン)
10月18日・28日・11月4日 ECOFFスタッフヒアリング(オンライン)
10月30日〜11月1日 大分県屋形島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
10月31日〜11月2日 東京都三宅島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
11月1日〜3日 北海道奥尻島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
11月7日〜10日 鹿児島県種子島訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)
11月13日〜15日 岩手県三陸漁場訪問(ECOFF世話人ほかヒアリング/仕事体験)

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