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種子島在住のECOFF理事・山田文香さんが「ある意味の緩さ」というように、ECOFFの旅のプログラムは、「誰もが参加できる地域おこし」という団体の基本理念と、現地世話人との信頼関係のみをベースに自由度高く設計されているのが特徴です。地域の風土や産業はもとより、世話人個々のパーソナリティによっても中身はさまざま。プロボノチームが5地域へ赴いておこなったヒアリング調査の結果にも、その多彩さが表れました。
以下は、その現地調査やECOFFスタッフへのヒアリングなどからチームが導き出した、ECOFFの現状分析の概要です。
ECOFFの活動の強み
- 参加者と受け入れ側の「交流」。そこから生まれる双方の充足感。受け入れ側のやりがい
- プログラムの「多様性」「自由さ」
ECOFFの活動の課題
- プログラムが多様であるがゆえの「受け入れ側の負担」
- 質の高い参加者の確保/訪問地域に対する参加者の理解/参加者への事後フォローなど
プロボノチームは、この分析と各地域から上がった多様な意見をもとに、本プロジェクトの2つの目標である「親善大使」の新設・募集、「村おこし旅」の設計に向けた方針を検討。以下、ECOFFへの中間報告の概要を紹介します。
①「親善大使」の新設・募集について
ECOFFがこれから活動地域と参加者を拡大していくにあたり、参加者の受け入れを遠隔サポートする役割として新設するのが「親善大使」。従来、エリアマネージャー3人が複数地域兼任で分担してきた役割を、親善大使は1地域専任で担う想定。以下は、募集要項作成に向けたプロボノチームの仮説(抜粋)です。
親善大使の業務
担当地域において、受け入れ側・参加者双方にとってよりよい旅をつくるためのコミュニケーション。現地世話人の思いをヒアリングし、参加者の声は改善に活かす
求められる能力や資質
担当地域への思い(島の人とのつながり・未来へのビジョン)/コミュニケーション能力/柔軟な価値観 など
任期
3年
得られるもの
担当地域の役に立つ感覚、本業へのメリット、人脈の広がり など
ターゲット
すでにその地域の関係人口となっている人が有力か。「村おこしボランティア」の過去の参加者やリピーター、特定地域へのリピート訪問者、世話人の知人など
募集方法
ECOFFや世話人との信頼関係が重要。当面は紹介制で、ECOFFメンバーによる面談によって採用
ECOFF代表の宮坂大智さんは、この大枠について「親善大使の募集要項案として過不足ない」として合意。その上で、「親善大使の業務自体はルーティーンワークが中心となる。最低限のタスクだけを決め、それ以外は親善大使という立場をうまく利用しながら、やりたいことを自由にできるようにすることがやりがいにつながるのでは」と、活動の自由度の高さをより打ち出したい意向を伝えました。
会に参加した大分県屋形島世話人・後藤猛さんからは、業務がルーティーンワーク中心となる前提も踏まえ、「どんな人が親善大使になりたいかを考えると、動機として、宮坂さんの思いへの共感が大きいのではないか。宮坂さん自身の言葉をもっと発信した方がよい」との提言も。
ここから最終提案に向けては、具体的な業務内容など必要な情報を追加収集しながら、「PRツールとして使えるA4表裏程度の資料」にまとめていく方針で合意しました。
②短期プログラム「村おこし旅」企画案について
「村おこし旅」は、現行の10日間のプログラム「村おこしボランティア」には参加困難だった社会人を対象に、短期日程を想定。現地世話人へのヒアリング調査では、村おこしボランティアとの比較で「短期間でいかに親密度を高めるか」という課題が浮かび上がったものの、実施にはおおむね肯定的な回答が。以下は、それらを踏まえた中間提案からの抜粋です。
「村おこし旅」の目的と狙い
- 参加者にとって=観光では触れることのできない、地域の人との関わりや暮らし体験。過疎地、農林漁業などの現場を知る
- 世話人・受け入れ地域にとって=地域のファン増。物品の購入者やサービスの利用者増。移住予備軍、後継者予備軍をつくるなど
- ECOFFにとって=社会人ファンを増やし、ECOFFの活動を広告、拡大
参加想定ターゲット
- 島や田舎が「気になる」以上、「大好き(リピーター、移住したいなど)」未満の人
- ただ消費する観光ではなく、「意味のある時間」をすごしたい人
コンセプト・プログラム内容
短期間の中で地域と人のファンになってもらい、新たな気づきを得てもらう2案を立案
- A案=観光でも、移住でもない。離島の暮らしと文化と自然をまるごと体験できる「社会人ホームステイ旅」
- B案=島おこしの最初の一歩。島人と一緒に島の未来について語り合う「ディスカッション旅」
この企画案には、プロボノチームが現地調査で得た実感を反映。半日〜1日程度の農作業では「ボランティア」とはなり得ず、むしろ受け入れ者側からのボランティア提供の比重が高まるため、参加者側の引け目の要因にも。受け入れ者への適正な支払いを前提とすることで、互いにとって気持ちのよい企画になるのではないか……との考えに基づき、立案されました。
この提案を受け、まずはECOFFの「村おこし旅」担当、山田さんが「ディスカッション旅」に一票。賛同理由として、想定する参加者ターゲット層にも、高い問題意識を持つ各地世話人の個性にもマッチする点をあげました。参加者のハードルが高まるとの懸念も語りましたが、プロボノチームからは「『ホームステイ旅』が他団体の観光旅と競合するのに比べ、個性を打ち出せるプログラムだから、自らそれを求める人が集まりやすい」「短時間の農業体験では、参加者は“お客さん”。ディスカッションなら、参加者側も『多少は貢献できているのではないか』という手応えが得られる」と、この案の強みが示されました。
宮坂さんも「刺激的なアイデア」として「ディスカッション旅」に賛同。山田さんの評価に加え、「その取り組みに社会的意義があり、それをECOFFがやる意義があるかどうかも大事なポイント。その意味で、すでに民泊という仕組みがある中、ECOFFが『ホームステイ旅』をやる必然性はない」と述べました。ディスカッション旅は大人数の参加を見込みづらいとの意見にも、「これをすべきという企画であれば、参加者が少なくてもやるというのが僕の考え。まずは同意してもらえる世話人の地域から始める検討をしたい」と、前向きな回答。
他方、宮坂さんを含め複数の出席者から課題とされたのが、ディスカッションという立て付けに伴う「重さ」でした。競合サービスとの比較やネーミングでどう軽さを出していくかや、「参加したい」と思わせる価格設定などが、最終提案へ向けての検証課題となりました。
中間報告を終えた「村おこし旅」担当の一人、安藤剛平(アンディ)さんは、「見当違いな提案にならずよかった!」と安堵の一言。「親善大使」共々、方向性が定まり、約2カ月後の最終成果物提出へ向けてより具体的な調査、立案へと進んでいきます。
【プロジェクト進展】
11月18日・25日 チーム週次ミーティング(オンライン)
12月1日 ECOFFへの中間報告会(オンライン)
12月7日 中間報告に対するECOFFからのフィードバック