新たな関係人口とつながる仕組み「ふるさとプロボノ」~19地域32のプロジェクト事例報告会~レポート前篇

2024年3月14日、全国の行政職員・中間支援組織・地域づくりに携わるみなさまを対象に、『新たな関係人口とつながる仕組み「ふるさとプロボノ」~19地域32のプロジェクト事例報告会~』を開催しました。

本レポートでは、メインパートの1つである「事例発表Part1」についてお届けします。
⇒「事例発表Part2」はこちらからご覧ください。
⇒ イベント全編の動画はこちらからご覧いただけます。

事例発表Part1では、地域のニーズと外をつなぐ「コーディネーター」と、地域外からの参加者を受け入れる「支援先団体」、異なる立場のお二人から事例発表を行っていただき、続けてトークセッションで話を深めました。

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コーディネーターによる、ふるさとプロボノの事例発表

コーディネーター/ICORAYO紀の川 福森 健之さん(和歌山県那賀振興局地域振興部)

和歌山県那賀振興局 地域振興部の福森と申します。
県北部の紀の川市にある「藤井の里くらぶ」と、地域外の参加者のコーディネーターをさせていただきました。

この赤線で囲んだところが、私たちが「藤井」と呼んでいる地域となり、葛城山の麓に位置し、明治期は稲作が盛んなところでした。現在は、果樹や柿、野菜など年中果物や野菜が採れる場所となっています。

ふるさとプロボノには、私だけではなく、紀の川市の職員や地域おこし協力隊、協力隊OB・OGと一緒に「ICORAYO紀の川」がコーディネーターとして取り組み、まずは藤井の里くらぶを受け入れ先に、マップを作ってみようということになりました。

1つ目のプロジェクトでは、泉本さんという方に、こういうマップを作ってもらいました。2023年3-4月にプロボノ参加者の募集を行い、4月末に泉本さんが藤井に滞在し、5月末には第一案をご提案いただき、7月に最終成果物を納品いただきました。

▼プロジェクトページ(地域の魅力や農家の思いを伝える農作物マップ作成)
https://grant.community/projects/53

その中で、「ロゴもしっかりとしたものを作らないといけないよ」という話になり、団体ロゴ制作のプロジェクトも同じくGRANT(地域外の担い手を募集するプラットフォーム)で立ち上げる段取りを行いました。

2つ目のロゴ制作プロジェクトでは、10月に現地に滞在していただき、ラフを12月に、そして1月にはこのようなロゴを作っていただきました。

▼プロジェクトページ(団体ロゴの制作)
https://grant.community/projects/653

そして、泉本さんはもう一回来ていただきました。
こういう色々なタイミングで地図は使えるんですね。地元に詳しいのは、本当に住んでいる人たちだけなので、僕らもいろんなときに使えています。
コーディネーターの役割としては、こうしたプロジェクトを団体自らが作成するときのサポートや、地域外から参加される方が現地滞在するときの段取りやフォローなどを行いました。

こちらは、サービスグラントさんと取り組むことになったきっかけです。
人と繋がって、繋がりを拡げながら、私はあくまでサポーターに徹してやってきました。

最後になりますが、那賀振興局のインスタグラムのアカウントも良かったらフォローをお願いします。

▼那賀まち
https://www.instagram.com/nagamachi_official/

 

支援先団体による、ふるさとプロボノの事例発表

支援先団体/ものずき村 米本 晋也さん(新潟県魚沼市 地域おこし協力隊)

私はいま地域おこし協力隊として新潟県魚沼市におりますが、出身は北海道網走郡です。
30年近く日用品メーカーの営業部門やマーケティング部門に勤務して、2021年から魚沼市の地域おこし協力隊として、直売所「ものずき村」を通して関係人口づくりに着手しています。

プロボノを知ったきっかけは、時事通信社の「おためし農業.com」でした。
農業関係の取り組みをしている6社ほどの中にサービスグラントさんがあって、課題に感じていることを解決してくれるのはこれだ!と思い、ご連絡を取りました。

▼おためし農業.com(農林水産省 令和5年度 農山漁村振興交付金の採択事業)
https://otameshi-agri.com/

新潟には先ほどのお話のようなコーディネーターがいらっしゃらなかったので、サービスグラントさんにコーディネーター役を引き受けていただき、いろいろと教えてもらいながら活動しました。

プロボノの支援依頼は大きく3ステップございます。
1点目は、ターゲットプロファイリングです。
ものずき村に関係人口を創出する目的で、農体験をして一緒に作ったものを分かち合う「農作業シェアリング」という活動のターゲット設定です。

▼プロジェクトページ(魚沼で農作業のシェアをしてみたい人のターゲットプロファイル作成)
https://grant.community/projects/479

2点目は、活動を告知するホームページを作成し、SNSに上げていくという元のところを作成する依頼です。

▼プロジェクトページ(ものずき村のホームページに魂入れをしてください)
https://grant.community/projects/502

そして3点目が、実際に企画に参加して改善提案をしていただく「パイロット企画」に参加する方を複数回にわたって募集しました。
こちらに11名、3ステップでご家族を含めて13名、延べ23回来訪していただきました。

▼団体ページ‘からプロジェクトページ(農村体験企画へのパイロット参加と改善提案)をご覧ください
https://grant.community/groups/480

GRANTで、このように参加者を募集していきました。まずは団体紹介をするページになっています。

▼GRANT(オンラインマッチングプラットフォーム)
https://grant.community/

続いてターゲットプロファイリングについては、目的と参加して欲しい人を募集しています。
告知ホームページに関しても、なぜ作っていかないといけないのか、どういった方に携わっていただきたいか、ということを書いています。

パイロット企画は、5月、6月、8月と段階を踏んで募集して、実際の活動に大勢の方に参加いただきました。

参加者からの提言は8つに分類整理した上で行う対応を発信し、さらに追加討議をオンラインで相談をしました。

そして今年2024年4月から、農作業シェアリングの中で田んぼを始めます。たくさんの方から「魚沼なのに、どうして稲作じゃないの?」という疑問をいただいたことともあります。

地域に来て農作業をするというのもいいんだけれども、一番の魅力は地元の人に触れ合えたり、非常に自然豊かなところを体験できたという感想もいただきました。
それらを踏まえ、あまり差別性がないんじゃないかと思ってトーンを落としていましたが、やはりそこがあっての農作業シェアリングだということで、企画の中にしっかり明示していくという改良を施しています。

詳しくはホームページなど、一度ぜひご覧ください。

▼ものずき村ホームページ
https://monozukimura.com/

関係人口創出における、ふるさとプロボノ(トークセッション)

―――藤井の里くらぶさんへの支援から1年半ほど経っていますが、地域の方がどのように活用されていますか

福森さん 農協観光協会さんの果物狩りなどいろんな人が来てくださるときや、地元の周りの人に紹介するときにこのマップを使ったりと、1枚ものの名刺みたいものだと思ってください、と使ってもらっています

―――ありがとうございます。人が来ている間が重要なタイプのボランティアもありますが、ふるさとプロボノの場合は支援の区切りがついた後にずっと成果物が活かされ続けているというところが、大きなポイントではないかと思います。

続いて米本さんに質問ですが、「おためし農業.com」の中で、サービスグラントが課題を解決してくれると思われたポイントをご説明いただけますか

米本さん サービスグラントさん以外の事業者さんがされていることは、農業を体験する活動をサポートします、というものでした。私自身は農業をしてもらいたいわけではなく、農作業シェアリングというコンセプトについて、どうしたら多くの方に拡げていけるかという戦略を考えるパートナーみたいなところを欲していました。

プロボノのみなさんが実際に来て、手足を動かして、自分で考えて提案を作ってくださるのであれば、私が望んでいたことだと思いました。

―――和歌山県と新潟県では、さまざまな関係人口の取り組みをされていると思いますが、ふるさとプロボノのようなアプローチはどういった意味合いを持っていますか

福森さん あくまでも私見ですが、いろいろな関係人口の取り組みの中で知り合える人ってちょっとずつ違うと思うんです。ふるさとプロボノの場合は、マップを描ける、あるいはイラストを作れる、という方と普段知り合うことはなかったので非常にいい機会でした。それとともに、こうして地元に入って活動をされて、地元を知った上でマップやロゴを作ってもらうというのは非常にありがたい取組みでした。

米本さん 実際に手を出して、力を貸して解決策を導くところが特徴だと思います。一般的な関係人口創出の取り組みというのは、お金を出してくれたり、あるいはノウハウを提供してくれたり、セミナーであったり、結構頭でっかちとかお金中心が多いです。

もちろん重要な要素ではあるものの、結局いまの課題というのは、人が活動することによってしか解決しないことがあまりにも多いので、それが他と際立つ違いかなと思います。

―――地域の課題を入口として、地域に関わって成果を出してもらう上で、課題の発信の仕方や、切り出し方、伝え方に工夫された部分があると思うのですが、いかがでしょうか

米本さん コーディネーターのみなさんにシートノックを何度もやっていただきましたが、課題を形成するところが一番難しいと思います。大きな課題設定として農作業を共同でやっていきたいということは自分で決めて考えられても、具体的にターゲットをどうするとか、パイロットで来ていただく方に魅力と課題をどう伝えたらいいのか、ということは大変お世話になりました。

福森さん 地図とロゴという2つに絞るときに、サービスグラントさんにアイディアをいただきました。また地元の人も難しいことだとは分かっていますが、一歩一歩進めていく、そして名刺にも使える地図をまず作ってみる、さらに次につなげていくための機会でした。昨年、真っ赤な「あかもんかぼちゃ」を生産しましたが、次のステップとしてはその六次産業化を都会の人たちの力を借りながら楽しくやっていければと思っています。

―――GRANTは、いつでも、いくつでもニーズを発信できるプラットフォームですので、ぜひプロジェクト化をお待ちしています。最後に、ふるさとプロボノについて、ひと言ずついただけますでしょうか

福森さん 主にオブザーバーという形で関わりながら、すごい楽しくさせていただきました。やはりやっている人間が楽しくなければ、活動は続かないと思うので、これからもこうした楽しい活動を続けていきたいと思っています。

泉本さんが2回目に来たときは、地元の方と一緒に羽釜でご飯を炊いたり、山でみかん狩りをしたり、楽しんでやれました。そうやって初めて地元の人と心を通じ合えるような活動ができると思ってコーディネートして、これからも一緒にいろいろな取り組みができればいいなと思っています。

米本さん ふるさとプロボノのコピーですごく気に入っているのが「心のどこかが、移住する。」という言葉にかなり打たれています。心のどこかがともにある関係を作れたということが、とてもポイントで、いまでもメッセンジャーグループでつながっています。今年の活動に向けて来られる方もいれば、来られない方も心の一部は置いて行ってもらっていると確信しています。

地域おこし協力隊は、どうしても移住者を増やせというミッションを与えられがちなんですが、それをいつまで言っていても、そんな夢物語じゃ解決しないと思っています。2地域、3地域と多地域に心を配れる人が増えていくことが一番いま必要だと思いますので、これができる活動がふるさとプロボノだと思っています。

 

⇒「事例発表Part2」はこちらからご覧ください。

⇒ ふるさとプロボノのリアルドキュメンタリーはこちらからご覧いただけます。

 

主催者について

認定NPO法人サービスグラントは、NPO・地域団体等の組織運営や事業活動に役立つ具体的な成果物を届けるプロジェクトを、2005年からコーディネートしてきました。これまでに参加したプロボノワーカーは5,560名以上、実施プロジェクトは1,380件を超える、国内最大規模のプロボノ運営団体です。

お問い合わせ

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担当 認定NPO法人 サービスグラント 岡本、横道