館山の豊かな土地を舞台に、農業というモノづくりに取り組む仲間を増やす試み (2)

千葉県館山市

南房総農育プロジェクト

マーケティング基礎調査

←(1)へ

農家の仕事は多岐に渡ることを知った現地訪問

農育プロジェクトとのキックオフミーティングから2週間後の10月17日・18日、プロボノチームは現地訪問として館山市を訪ねました。目的は農育プロジェクトのメンバーとのヒアリング、そして彼らと共に農作業を体験し理解を深めること。スナップエンドウのネット張りや、にんにくの芽やレタスの苗の植えつけ、さつまいもの根取りなど、いろいろな作業を体験させてもらいました。

長島「農作業ハードでしたよね」

鈴木「農家って本当に肉体労働ですよね。あっ、これ筋肉痛になるなって(笑)」

長島「でも、農家にとって畑は本番なんですよね。私たちにとって体験だからといって、失敗はしたくない。真面目に、緊張感を持ちながら作業しました。あと、私たちもしっかりとプロジェクトに向き合わなければ、と気を引き締めるきっかけになりましたね」

ひろ「作業をしながらヒアリングもしつつ、タネどこで買うんですか?とか、肥料にはどんなこだわりがありますか?とか、プロジェクトにはあまり関係ないけれど、知りたいことってどんどん出てくるんですよね。とても興味深かったです」

加藤「普段触れる機会がない、知らない世界のことだからなんでしょうね。トマトは知っているけれど栽培過程は知らないんですよね」

長島「あと、農育プロジェクトのみなさんの、栽培スタイルもそれぞれ違うのが面白かったです。農作業体験でお互いの畑を見て、『へぇ、こんな風に栽培しているんだ』みたいな。お互いを尊重し、一定の距離感を保ちながら仲間としてやっているんですね」

加藤「普段、情報交換などしながら、農業を進めているんでしょうね。あと農業って、農作業そのものから販売まですごく多岐に渡るんですよね。会社勤めだと、専門領域みたいものがあるんですけれど、野菜を作りながら販売もやらなきゃならない大変さを改めて感じました」

現地でプロボノチームの目を引きつけた小屋のたたずまい。そのエピソードは下記「取材後記」に。
レタスの苗植えをするプロボノワーカー。農家の大変さを実感。

館山に移住し、新規就農したい人を探すには?

農業で館山に根付く人々を増やすための農業研修プログラム。募集情報の発信をどう行うのが効果的なのか。現地訪問のヒアリングで、農育プロジェクトの思いを聞いたメンバーたちは、情報を誰に伝えるのが効果的か、ターゲットを絞り込んでいきました。その仮説が「館山に住んで農業を始めたい人」。つまり「新規就農と移住定住が重なる層」にアプローチをすればよいと考えたのです。この新規就農と移住定住、当初はそれぞれ別のものとして考えていたといいます。

ひろ「実は私たちの感覚と、農育プロジェクトの感覚では、最初、ずれがあったんです。私たちは週末農業みたいな感じで、東京近郊にいる人が館山に行って農業をすることから始めるのがいいことなのではと思い、そうしたニーズは高いんじゃないか、という考えでいたんです。でも、それは農育プロジェクトが求めているものとはかなり乖離していた。農業って、毎日水をやらなきゃいけないときもあるし、地域コミュニティとか、移住した後の生活までを考えていた農育プロジェクトのなかでは、週末だけってあり得ないよな、という考えで始まっていた気がします」

加藤「初めは就農と移住を区別していましたが、区別する問題ではなかったんだと思います。農育プロジェクトにとっては両方なんです。就農者を増やすためには、館山に住んで農業をやってもらうことが大前提だと考えていて、移住はセットなんですよね。 そこを理解して、チームミーティングを重ねるうちに、館山に来てもらうため、館山のファンを作るために、農業に興味がある学生に向けて……という感じで館山と結びつけるような議論になっていきました」

館山は、新規就農者にとってスタートしやすい土地だと農育プロジェクトでは考えている。

また、調査を進めるうちに新規就農者が就農地を選ぶときは、「地縁、ないしは地元を重視する」傾向があることも分かりました。11月7日に行われた農育プロジェクトへの中間提案では、館山や千葉の人々に「就農地としての館山の魅力」を伝えていくことが、新規就農者獲得には有効と仮説を伝えました。その方法が、地元の移住相談窓口などと連携すること。そのためのヒアリングやリサーチを調査方針として提案したのです。ヒアリングは、移住相談を受けつけている館山市のNPO法人 おせっ会(以下、おせっ会)、隣のいすみ市のNPO法人 いすみライフスタイル研究所(以下、いすみライフスタイル研究所)を対象に行うことになりました。

ひろ「就農と移住を区別する必要はありませんでしたが、就農と移住のどちらからアプローチするかを考えるということは有益でした。『農業に興味があり、探した農地が館山にあった人』と、『館山に住みたくて、ここで何をしようと考えた結果が、農業だった人』。前者と後者では、それぞれアプローチ先が変わってくるんです。 おせっ会と農育プロジェクトは、いろいろなところでコラボしています。それもあり、まずヒアリングの対象にさせていただきました。年間の移住相談の件数や、農業に興味がある人の割合についてうかがいました。また、おせっ会はその活動をYouTubeやメルマガなど、いろんな手法を使って告知していましたので、南房総の人たちに対しての効果的なアプローチ方法についてもアドバイスを求めました」

長島「新規就農者は、自分のルーツがあるところに農地を持つというのが分かっていたので、例えば隣のいすみ市にゆかりがある人が農地を探したときに、いすみ市にいい場所がなかったら、隣の館山市で探すこともあるかもしれない。そう考え、いすみライフスタイル研究所にヒアリングしました。結果は、おせっ会も、いすみライフスタイル研究所も一緒で、移住定住希望者で、農業をやりたいと相談する人はほとんどいないということでした。きっと新規就農者は、移住定住相談からではなく、別のルートをたどって農地を探すんですね。でも、そういうことが確認できてよかったです」

ヒアリング調査の結果、農育プロジェクトの研修ターゲットである、舘山に移住し新規就農したい人を見つけるのは、現在のネットワークでは困難ということがわかりました。

では、どうしたら今回のミッションを達成できるのか。チーム内の議論は、1月31日の最終調査報告に向けて熱を帯びていきます。

【プロジェクト進展】
10月4日 オリエンテーション・チームミーティング /キックオフミーティング
10月8日〜16日 現地ヒアリング準備
10月17日・18日 現地訪問・農業体験、ヒアリング
10月23日〜11月5日 調査方針作成
11月7日 中間(調査方針)提案
11月9日 フィードバック
11月12日〜12月19日 ヒアリングに向けた準備
12月20日 団体関係者に個別ヒアリング
12月27日〜1月29日 ヒアリング結果分析・最終報告に向けての調査

→最終話へ

千葉県館山市で農業振興を目的に活動を行うNPO法人 南房総農育プロジェクト(以下、農育プロジェクト)。農業に取り組む仲間を増やしたいと、新規就農希望者向けの中長期の農業研修プログラム提供を計画している。その募集情報を効果的に届けるにはどうすればいいのか。この課題に4カ月半、プロボノチームは向き合い続けてきた。今回はメンバーの加藤吉英(バカリ)さん、ひろさん、長島祐(ながしー)さん、鈴木裕美子(かたかた)さんにプロジェクトを振り返ってもらった。

プロボノチーム

バカリさん(プロジェクトマネジャー)

通信キャリアの営業担当。農業検定2級を保有。過去に6次産業化プロジェクトに参加経験あり。自分のもうひとつのホームになればと参加。

ひろさん(マーケッター)

電機メーカーの法務部門に勤務。専門外の分野で視野を広げたい、自然に関する仕事を体験し、仕組みを知りたいと参加。

かたかたさん(マーケッター)

国立大学の事務職員、人事交流で出向中。ママボノ経験者。世の中、いろいろな方で成り立っていることを子どもたちにも見せたいという思いで参加。

まみさん(マーケッター)

建設業界で役員秘書。仕事をしながら地域社会とのつながりづくりや、新たな出会い、知らないことを知る経験をしたいと参加。

ながしーさん(コピーライター)

報道記者、コンサルなどを経て人材系ベンチャーの法務担当。料理好きで、農業支援に関心があった。社外で何ができるか関心があり参加。

地域団体

地域概要

千葉県館山市は海も山もある豊かな土地。温暖で、年間通して降雪はなく、一年中農産物が収穫できる豊かさが魅力だが、館山市を含む南房総エリア全体での新規就農者は少ない。

団体概要

2015年、館山市内の「農」に関連する人が集まり設立。地域内外に広く農業への理解を深める機会提供を通じて、地域の農業振興を目指している。

プロジェクト概要

農業研修プログラムの受講生を募集するにあたって、効果的な情報発信の内容や方法を明らかにするマーケティング調査に取り組む。

千葉県館山市で農業振興を目的に活動を行うNPO法人 南房総農育プロジェクト(以下、農育プロジェクト)。農業に取り組む仲間を増やしたいと、新規就農希望者向けの中長期の農業研修プログラム提供を計画している。その募集情報を効果的に届けるにはどうすればいいのか。この課題に4カ月半、プロボノチームは向き合い続けてきた。今回はメンバーの加藤吉英(バカリ)さん、ひろさん、長島祐(ながしー)さん、鈴木裕美子(かたかた)さんにプロジェクトを振り返ってもらった。

プロボノチーム

バカリさん(プロジェクトマネジャー)

通信キャリアの営業担当。農業検定2級を保有。過去に6次産業化プロジェクトに参加経験あり。自分のもうひとつのホームになればと参加。

ひろさん(マーケッター)

電機メーカーの法務部門に勤務。専門外の分野で視野を広げたい、自然に関する仕事を体験し、仕組みを知りたいと参加。

かたかたさん(マーケッター)

国立大学の事務職員、人事交流で出向中。ママボノ経験者。世の中、いろいろな方で成り立っていることを子どもたちにも見せたいという思いで参加。

まみさん(マーケッター)

建設業界で役員秘書。仕事をしながら地域社会とのつながりづくりや、新たな出会い、知らないことを知る経験をしたいと参加。

ながしーさん(コピーライター)

報道記者、コンサルなどを経て人材系ベンチャーの法務担当。料理好きで、農業支援に関心があった。社外で何ができるか関心があり参加。

地域団体

地域概要

千葉県館山市は海も山もある豊かな土地。温暖で、年間通して降雪はなく、一年中農産物が収穫できる豊かさが魅力だが、館山市を含む南房総エリア全体での新規就農者は少ない。

団体概要

2015年、館山市内の「農」に関連する人が集まり設立。地域内外に広く農業への理解を深める機会提供を通じて、地域の農業振興を目指している。

プロジェクト概要

農業研修プログラムの受講生を募集するにあたって、効果的な情報発信の内容や方法を明らかにするマーケティング調査に取り組む。

←(1)へ

農家の仕事は多岐に渡ることを知った現地訪問

農育プロジェクトとのキックオフミーティングから2週間後の10月17日・18日、プロボノチームは現地訪問として館山市を訪ねました。目的は農育プロジェクトのメンバーとのヒアリング、そして彼らと共に農作業を体験し理解を深めること。スナップエンドウのネット張りや、にんにくの芽やレタスの苗の植えつけ、さつまいもの根取りなど、いろいろな作業を体験させてもらいました。

長島「農作業ハードでしたよね」

鈴木「農家って本当に肉体労働ですよね。あっ、これ筋肉痛になるなって(笑)」

長島「でも、農家にとって畑は本番なんですよね。私たちにとって体験だからといって、失敗はしたくない。真面目に、緊張感を持ちながら作業しました。あと、私たちもしっかりとプロジェクトに向き合わなければ、と気を引き締めるきっかけになりましたね」

ひろ「作業をしながらヒアリングもしつつ、タネどこで買うんですか?とか、肥料にはどんなこだわりがありますか?とか、プロジェクトにはあまり関係ないけれど、知りたいことってどんどん出てくるんですよね。とても興味深かったです」

加藤「普段触れる機会がない、知らない世界のことだからなんでしょうね。トマトは知っているけれど栽培過程は知らないんですよね」

長島「あと、農育プロジェクトのみなさんの、栽培スタイルもそれぞれ違うのが面白かったです。農作業体験でお互いの畑を見て、『へぇ、こんな風に栽培しているんだ』みたいな。お互いを尊重し、一定の距離感を保ちながら仲間としてやっているんですね」

加藤「普段、情報交換などしながら、農業を進めているんでしょうね。あと農業って、農作業そのものから販売まですごく多岐に渡るんですよね。会社勤めだと、専門領域みたいものがあるんですけれど、野菜を作りながら販売もやらなきゃならない大変さを改めて感じました」

現地でプロボノチームの目を引きつけた小屋のたたずまい。そのエピソードは下記「取材後記」に。
レタスの苗植えをするプロボノワーカー。農家の大変さを実感。

館山に移住し、新規就農したい人を探すには?

農業で館山に根付く人々を増やすための農業研修プログラム。募集情報の発信をどう行うのが効果的なのか。現地訪問のヒアリングで、農育プロジェクトの思いを聞いたメンバーたちは、情報を誰に伝えるのが効果的か、ターゲットを絞り込んでいきました。その仮説が「館山に住んで農業を始めたい人」。つまり「新規就農と移住定住が重なる層」にアプローチをすればよいと考えたのです。この新規就農と移住定住、当初はそれぞれ別のものとして考えていたといいます。

ひろ「実は私たちの感覚と、農育プロジェクトの感覚では、最初、ずれがあったんです。私たちは週末農業みたいな感じで、東京近郊にいる人が館山に行って農業をすることから始めるのがいいことなのではと思い、そうしたニーズは高いんじゃないか、という考えでいたんです。でも、それは農育プロジェクトが求めているものとはかなり乖離していた。農業って、毎日水をやらなきゃいけないときもあるし、地域コミュニティとか、移住した後の生活までを考えていた農育プロジェクトのなかでは、週末だけってあり得ないよな、という考えで始まっていた気がします」

加藤「初めは就農と移住を区別していましたが、区別する問題ではなかったんだと思います。農育プロジェクトにとっては両方なんです。就農者を増やすためには、館山に住んで農業をやってもらうことが大前提だと考えていて、移住はセットなんですよね。 そこを理解して、チームミーティングを重ねるうちに、館山に来てもらうため、館山のファンを作るために、農業に興味がある学生に向けて……という感じで館山と結びつけるような議論になっていきました」

館山は、新規就農者にとってスタートしやすい土地だと農育プロジェクトでは考えている。

また、調査を進めるうちに新規就農者が就農地を選ぶときは、「地縁、ないしは地元を重視する」傾向があることも分かりました。11月7日に行われた農育プロジェクトへの中間提案では、館山や千葉の人々に「就農地としての館山の魅力」を伝えていくことが、新規就農者獲得には有効と仮説を伝えました。その方法が、地元の移住相談窓口などと連携すること。そのためのヒアリングやリサーチを調査方針として提案したのです。ヒアリングは、移住相談を受けつけている館山市のNPO法人 おせっ会(以下、おせっ会)、隣のいすみ市のNPO法人 いすみライフスタイル研究所(以下、いすみライフスタイル研究所)を対象に行うことになりました。

ひろ「就農と移住を区別する必要はありませんでしたが、就農と移住のどちらからアプローチするかを考えるということは有益でした。『農業に興味があり、探した農地が館山にあった人』と、『館山に住みたくて、ここで何をしようと考えた結果が、農業だった人』。前者と後者では、それぞれアプローチ先が変わってくるんです。 おせっ会と農育プロジェクトは、いろいろなところでコラボしています。それもあり、まずヒアリングの対象にさせていただきました。年間の移住相談の件数や、農業に興味がある人の割合についてうかがいました。また、おせっ会はその活動をYouTubeやメルマガなど、いろんな手法を使って告知していましたので、南房総の人たちに対しての効果的なアプローチ方法についてもアドバイスを求めました」

長島「新規就農者は、自分のルーツがあるところに農地を持つというのが分かっていたので、例えば隣のいすみ市にゆかりがある人が農地を探したときに、いすみ市にいい場所がなかったら、隣の館山市で探すこともあるかもしれない。そう考え、いすみライフスタイル研究所にヒアリングしました。結果は、おせっ会も、いすみライフスタイル研究所も一緒で、移住定住希望者で、農業をやりたいと相談する人はほとんどいないということでした。きっと新規就農者は、移住定住相談からではなく、別のルートをたどって農地を探すんですね。でも、そういうことが確認できてよかったです」

ヒアリング調査の結果、農育プロジェクトの研修ターゲットである、舘山に移住し新規就農したい人を見つけるのは、現在のネットワークでは困難ということがわかりました。

では、どうしたら今回のミッションを達成できるのか。チーム内の議論は、1月31日の最終調査報告に向けて熱を帯びていきます。

【プロジェクト進展】
10月4日 オリエンテーション・チームミーティング /キックオフミーティング
10月8日〜16日 現地ヒアリング準備
10月17日・18日 現地訪問・農業体験、ヒアリング
10月23日〜11月5日 調査方針作成
11月7日 中間(調査方針)提案
11月9日 フィードバック
11月12日〜12月19日 ヒアリングに向けた準備
12月20日 団体関係者に個別ヒアリング
12月27日〜1月29日 ヒアリング結果分析・最終報告に向けての調査

→最終話へ