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候補者育成の3ステップ
館山での新規就農者を見つけるのが困難なら、候補者を育てていけばいい。1月31日の最終調査報告で、プロボノチームは、3ステップからなる施策を提案しました。
- ステップ1:首都圏近郊の大学で農や食に興味を持つサークルと関係性を作る
- ステップ2:移住・新規就農について活動を行う団体と連携し、短期の館山移住・農業研修を行う
- ステップ3:農育プロジェクト主体の長期農業研修の実施
加藤「新規就農で館山に移住するには、農業のことだけしていればいいわけじゃない。生活そのものや、地域コミュニティについても考える必要があり、すぐに決められることではないと考えました。また、農育プロジェクトも多くのリソースを割ける状態でもありません。だから、まず学生との連携や、館山ファンを増やす。次に短期の農業研修を他団体と行う。そして最後に、移住することも考えてもらいながら、農育プロジェクトの研修を1年間受けてもらう。短期農業研修で感度の高い人を見つければ、これは農育プロジェクト主体で行えると考えました」
このうち、農育プロジェクトが特に関心を示したのが、ステップ2の他団体との連携でした。プロボノチームが提示した連携の候補団体案のなかでも、株式会社ブランド総合研究所が行っている事業は、就農・就業・定住につながる体験を3週間で行うもの。この研修先に採択されれば、感度の高いターゲットに出会う可能性が高い。そこで2月14日、その採択に向けたアクションプランをワークショップで議論しました。これが今回のプロジェクトの集大成となりました。
ひろ「現地訪問で、農育プロジェクトのみなさんの『移住もコミュニティも農業も大事』という思いを理解したと思っているんです。それを最後の施策にどうつなげるのか、チームでこれ以上ないほど議論しました。チラシを作るとか、SNS を活用するとかも方法としてあるんですが、でも、それで果たして農育プロジェクトが満足するかというと違うと。そんなとき、加藤さんからブランド総研の話が出てきて、すごくマッチしていて。うまく具体化できたのかなと思います」
加藤「農育プロジェクトの話をうかがうと、移住や人を呼び込むプランが具体的にないと。みなさんそれぞれ得意分野はあるけど、それが強力なパワーとなって呼び込める状態では、まだなかったんですね。これは農育プロジェクトだけで企画するのではなく、他の団体とか、外部の使えるリソースは使うべきということで、連携できる団体を調査するなかで、候補先のひとつであるブランド総研からヒアリングすることができました。そこに行き着いたのは、やはりチーム内の十分かつ丁寧な議論と、メンバーそれぞれの想いやアイディアがあったからこそだと思います」
フィードバックシートにあふれる言葉
このワークショップに先立ち、最終調査報告を受けた農育プロジェクトからのフィードバックシートが、プロボノチームに届きました。そこには、農育プロジェクトのみなさんから、今回のプロジェクトの感想が“フィルターを通さず”書かれていました。「プロボノチームの方はよく調べてくれた」「他団体と協力して何かをするのはおもしろい」「新しい気づきをもらい勉強になった」という意見から、「報告会の時間が長くて集中力が途切れた」「報告書は作り込みすぎ」といった意見まで。良かったことも反省すべきことも包み隠さず書かれたシートには、農育プロジェクトのみなさんからプロボノチームへの感謝が込められていました。
ひろ「代表の岩槻さんの意見だけじゃなくて、複数の人の意見がもらえたんです。それは最終調査報告の後、内部でしっかりと話し合い、受け止めてくれたということ。お世辞だとは思いますが『みなさんは、将来も社会貢献的な活動をしていくメンバーなので、忌憚のない意見を書きます』と。だから建設的な意見として、悪いところも正直に言っていただけたんだと思います」
全員「ありがたいですよね」
プロボノ活動を続ける理由
10月4日のキックオフから2月14日のワークショップまで実に4カ月半。メンバーはともに充実した期間だったと語ります。連日の資料作成やリサーチ作業、週に一度のミーティングでの議論。いつしか館山との心の距離は格段に近くなっていました。
鈴木「考えない日はなかったかもしれないですね。ふるさと納税しちゃおうかなみたいな感じです」
長島「館山のニュースが出るとやっぱり気になりますよね」
加藤「知らない地域から、特別な地域になりました」
ひろ「今度は、家族とまた行きたいと思っています。南イタリアに似ている気候だというので、春とか夏がいいかな」
この4カ月半、課題に向き合いながらプロボノワーカーが得たものは何だったのでしょうか?
ひろ「普段、接点がまったくない人にたくさん会えたことです。その人たちが農業はもちろん、行政への働きかけ、他団体とのコラボとか、いろんな面で努力している。そういうことをリアルに感じることができ、知らない人の努力を知ることができた。そういった生き方があるんだなという、自分のなかで安心感につながりました」
加藤「農業って厳しいというイメージから、ここ10年で新しいあり方が出てきてもいて、脚光を浴びつつあります。でも、若い世代の新規就農者はそんなに増えていないんです。いろんな施策がなされているなか、それでも増えないというのは、やはり簡単な問題ではないのだろうと。そうしたことを学びました」
プロボノチームのみなさんは、今後もプロボノ活動を続けていきたいと話します。
ひろ「やはり自然に関することが面白いなと思っていて、農業でも漁業でも、離島でも、また参加してみたいです」
鈴木「ふるさとプロボノでもいいなとは思いますが、近い地域で身近な問題を知るのもいいかな。いずれにしても参加したいです」
長島「サービスグラントのプロジェクトも引き続きチャレンジしたいですし、自分が興味関心のあるテーマを抱える団体があれば、自分が団体側の一員になるみたいな動きにもチャレンジしてみたいなと思います」
加藤「私にとってのモチベーションは、普段知れないことを知れたり、人に会えたりすること。ふるさとプロボノのような、地方の一次産業をテーマに持っているところで、ぜひ参加したいです」
【プロジェクト進展】
1月31日 最終調査報告
2月4日〜13日 ワークショップ準備
2月14日 ワークショップ