←(2)へ
現地ヒアリングで見えてきたもの
「里山と暮らす応援講座」(以下、「里山講座」)と「スモールファーム自給塾」(以下、「スモールファーム」)のコア参加者に対するヒアリングで明らかになった里山倶楽部の魅力は、「居心地の良さ」や「仲間がいることの良さ」。プロボノチームはこの結果をもとに、「里山倶楽部にある潜在的な魅力(ヒト・場・モノ)は、十分に訴求できるのではないか?」という仮説を立てました。
また、事業評価という形で過去の受講者にアンケート調査をするにあたって、「里山倶楽部は何をもって成功とみなすのか?」という基準が必要だと、プロボノチームからは意見が出ました。里山倶楽部の固有の成果とは、どこまでを目的とするのか。その目的によって、ターゲットの設定や今後のアプローチに違いが出てくることが予想されるからです。
「スモールファーム」は食べものとの関わりが明確にわかり、講座修了後も畑で野菜作りを継続できる仕組みがある。一方で「里山講座」は直接的な恩恵がわかりづらいため、参加者との関わりを継続するためには、より工夫が必要と推測される。受講後の具体的な行動や生活の変化は、今後の課題を把握するための肝になるはず。そもそも講座に参加する人を増やしたいのか、継続する人を増やしたいのか……。調査方針提案直前の定例ミーティングでも、プロボノチームの議論は続きます。
求められる「事業評価」とは?
11月27日の「調査方針提案」でプロボノチームは、ヒアリングに基づく仮説とアンケート案を提示。アンケート案は「里山講座」「スモールファーム」の過去5年間の受講者共通のフォーマットで、質問は16項目に分かれていました。これらをもとにアンケート項目の内容検討やゴールのすり合わせ、今後のスケジュールの確認が行われました。
仮説①
「里山講座」「スモールファーム」の卒業生に対するアンケートはこれからだが、コア層インタビューから浮かび上がった「潜在的な魅力」は十分訴求できるのではないか。
仮説②
里山倶楽部の固有の成果とは、どこまでを目的と考えるか。 より深化した内容までを目的と考えた場合、ターゲットの設定やアプローチに違いが出てくると思われる。
調査方針提案について里山倶楽部からは「アンケートの内容は『里山講座』『スモールファーム』『里山倶楽部』という3つに分けて、考察を進めてほしい」というフィードバックがありました。里山倶楽部は事業ごとの独立採算制のため、活動のあり方や目指すものに対する考え方がそれぞれ微妙に異なるからです。
「今回のプロボノプロジェクトを始めるまでは想像していなかったのですが、『スモールファーム』と『里山講座』をそれぞれ分析すると、里山倶楽部全体への提案が見えてくるのではないか、と気づきました」(寺川裕子さん)
「『スモールファーム』と『里山講座』では、目的や時間軸、提供できるものが違う。多様性があり、事業ごとに目的を優先して取り組めることが里山倶楽部の良さだと思います」(新田章伸さん)
「『スモールファーム』は参加することが目的。来てもらって共に学ぶことが成果だと考えています。たくさんの人が受ける必要はなく、無農薬農業に関心があり、私たちの考え方に共感できる人に来てもらうことが大事です」(鈴木計さん)
「私としては、里山に一度でも来ていただけたら感謝。チェーンソーや道具の安全な使い方を知ってもらい、その日に里山に来てよかった、と思ってもらえることがひとつの成功だと思います。里山倶楽部全体で考えると、講座に参加して会員としてつながってもらうことが成功だと思います」(西川阿樹さん)
プロボノチームは提案直後の定例ミーティングにおいて、アンケートを3つに分ける方向で内容を整理。里山倶楽部の要望を汲むとともに、第三者のプロボノだからこそ踏み込んで聞けることを、より重視したいと考えました。調査方針提案を終えたプロボノチームが感じたのは、依頼者側もなかなか認識できていない課題やニーズを把握することの難しさ。里山倶楽部が求める「事業評価」とは何か?何を評価軸として、どのような成果物をアウトプットするのか?プロボノチームは原点に戻って、今回の追跡調査で求められるものを見つめ直します。
【プロジェクトの進展】
11月19日~11月21日 里山倶楽部スタッフに対するヒアリング(オンライン)
11月27日 「調査方針提案」を実施(オンライン)