いすみの里山里海、そこに息づくオーガニックな生業の魅力を地域内外に発信したい (3)

千葉県いすみ市

NPO法人 いすみライフスタイル研究所

パンフレット作成

←(2)へ

いすみライフスタイル研究所(以下、いラ研)への二度目の訪問で得た気づきは、チームで唯一のコピーライターとしてパンフレットの編集・執筆を担う葛谷晴子(くずぽん)さんにとっても、理解の糸口となったといいます。

「プロジェクトの立ち上げ当初は、支援先であるいラ研さんの“いすみオーガニック”という活動はすばらしいから応援してね!という主旨でパンフレットを作るものと思っていましたが、その核となるメッセージが、なかなか見えてきませんでした。 でも、そこから理解を進めていけたのは、いラ研の江崎さんからいただいた、『“プロボノチームがとらえたいすみオーガニック”をパンフレットにしてほしい』という言葉があったからです。いすみオーガニックという運動の主体は、実はいラ研さんではなく、一人ひとりの農業生産者や役所の方たちなのではないか。パンフレットの発注者はいラ研さんだけれど、彼らは自分たちの活動としていすみオーガニックをアピールしたいわけではなく、むしろこの活動の主体者たちを応援する立場なのではないか、と。いラ研の皆さんは、当初から、農業生産者の方へのインタビューの声を届けたいとおっしゃっていましたが、その意図がようやく腑に落ちました」

知って、考えて、感じてもらういすみオーガニック

では、“プロボノチームがとらえたいすみオーガニック”とはどのようなものか。誰に向け、何を伝え、どこを目指してパンフレットを作るのか。マーケッターの3人を中心に大きなビジョンを描きつつ、ここまでのヒアリングや調査の内容を咀嚼。さらに、葛谷さんや、デザイン担当の高畑ひろみ(はたし)さんによる誌面構成の視点も交えながら、コンセプトの策定が進んでいきました。 迎えた11月22日、プロジェクトマネジャーの辻崇(TED)さん、マーケッターの山本欽章(きんしょう)さん、林幹央(みっきー)さんの3人がいラ研事務所を再訪し、マーケティング戦略提案に臨みました。

オンライン参加のクリエイティブチームも交えて行われたマーケティング戦略提案

以下は提案の概要です。

--------------

◆パンフレットの目的
「いすみ市民に“いすみオーガニック”に関連する活動・トピックスを知って、考えて、感じてもらう」

このパンフレットは、読み手による有機農産物の購買など、具体的なアクションを求めるのではなく、まずはいすみオーガニックという活動を認知してもらい、自ら考え、感じてもらうことを目的とする。

◆フェーズ1の役割
いすみ市の活性化を目指す“いすみオーガニック”のロードマップには、大きく3つのフェーズがあると想定。
フェーズ1=市内へのPR/市民の認知向上
フェーズ2=市外へのアピール/移住者の呼び込み
フェーズ3=独自の立ち位置で生き残る自治体へ/いすみオリジナルの確立

このうち、パンフレットが目指すのは、フェーズ1「市民の認知向上」の実現。いラ研やいすみ市行政は未来を見据えて活動しているが、まずは市民一人ひとりの “今”につながる情報を届け、知ってもらうことが肝要。

◆いすみオーガニックの主要3テーマをコンテンツに(計8ページ想定)
①過去(実績)=いすみ市の学校給食米の有機化
②現在(進行形の挑戦)=地産地消のオーガニック商店「いすみや」の誕生
③未来=有機農法の課題と今後の発展

この3テーマを、いすみオーガニック運動を支える人々の声を紹介しながら展開する。

--------------

この提案は、プレゼンを受けたいラ研理事長の高原和江さん、副理事長の江崎亮さんから、好評をもって迎えられました。

「市民の方たちの誰もが、環境や農業について深く考えてくれたら、もちろん一番いいのですが、なかなかそうはいきません。だから、このパンフレットの『まずは知ってもらう』というコンセプトはとても大切。読んだ方たちが、それぞれの立ち位置で、私もこの取り組みに加わってみようとか、がんばっているこの農業生産者さんの野菜を探してみようとか、“自分が踏み出せる一歩”を見つけてくれるとよいです。いすみオーガニックの運動は、私たちだけでできることではありませんから、近隣市町村も含め、ここから波及していってほしい」(高原さん)

「私たちの団体は、私たちの目の前のことで精一杯というのが実情ですから、こうして外の方たちの目線で、私たちの活動の意義を客観的に整理し、評価していただけるのはありがたいこと。いすみにいる私たちではなく、皆さんの視点で発信いただくことが大事です」(江崎さん)

内容の細かな調整は生じたものの、全体のコンセプトや誌面構成については、大筋で合意に至ったいラ研とプロボノチーム。安堵とともに、ここから具体的な誌面制作プランへと移っていきます。

“声”で構成する全12ページ

団体の希望を受け、パンフレットには、夷隅(いすみ)小学校5年生の「総合的な学習の時間」の中で2016年から行ってきた「いすみ教育ファーム」の紹介、そして学校給食への有機野菜の導入を紹介する記事も加えることに。それらを反映し、パンフレットは計12ページで構成することになりました。

コピーライターの葛谷さんは、ここまでマーケッターチームが積み上げてきたヒアリング、例えばさまざまな立場の農業生産者の人たちや、長年、環境保全活動に取り組んできた房総野生生物研究所の主宰者で、現在はいラ研の理事を務める手塚幸夫さん、そして「いすみオーガニックの活動における行政サイドのキーマン」としていラ研のメンバーも信頼を寄せる、いすみ市農林課の鮫田晋さんなどの話を丹念に読み返し、その多様な声をベースに12ページの詳細な構成案を作成。12月13日、改めていラ研へ赴いて提案を行い、合意に至りました。

実際のパンフレット制作に向けて大きく前進した制作プラン提案
「いすみや」へも訪問。学校給食に採用されているのと同じ圃場、同じ農法でつくられた有機米も販売されている

増ページに伴い、作業量が大幅に増すことになった葛谷さんですが、このころには、制作方針への迷いは払しょくされていたといいます。

「マーケッターチームが、このパンフレットの目的を“いすみオーガニックに関連する活動・トピックスを知って、考えて、感じてもらうこと”と定義してくれたことで、私の中の疑問への答えも明確になったんです。つまり、このパンフレットのメッセージは『いすみオーガニックはすばらしい』ではなく、『みんなも知って、一緒に考えて!』なのだと。そこさえ見えれば、あとは集めた情報をどう編集していくかだから、悩むこともありませんでした」

ここから原稿執筆、デザインと作業の山場に差し掛かるプロボノチームは、各々に与えられた役割を超え、サポートし合いながら、ゴールへと走ります。

【プロジェクト進展】
11月1日〜21日 主にマーケティングチームによるマーケティング戦略提案準備
11月7日〜12月12日 プロボノチーム週次ミーティング(オンライン)
11月22日 現地訪問(団体へのマーケティング戦略中間提案・農業生産者といすみ市役所へのヒアリング)
11月22日〜12月12日 主にクリエイティブチームによる制作プラン提案準備
12月13日 現地訪問(団体への制作プラン提案・いすみや取材・関係者へのヒアリング)

→最終話へ

必要なのは団体側からの答えではなく、「自分たちの俯瞰の目線」であるという出発点に立ったプロボノチーム。ここからは、「自分たちのとらえるいすみオーガニック」を分解し、構築していく。チーム内の議論は週次ミーティングのみでは追いつかず、連日、チャットツールSlack上で仮説の提案と修正を積み重ねた末、マーケティング戦略提案、さらにクリエイティブチームによる制作プラン提案へと進んでいった。

プロボノチーム

TEDさん(プロジェクトマネジャー)

自動車部品メーカー勤務。プロボノ初参加。新しい環境で刺激を得て自分のできることの幅を広げ、人やコミュニティの役に立ちたい。

きんしょうさん(マーケッター)

化粧品メーカー勤務。活動地、いすみ市のある千葉県内在住。活動を通じ、今後、自分が地元や地域にどう関わっていくべきなのかを考えたい。

すぎさん(マーケッター)

人材サービス業勤務。仕事とは違う世界を広げたいと思い、初参加。協働の楽しさを味わいながら、地域とチームの役立っていきたい。

みっきーさん(マーケッター)

金融機関勤務。非営利的な活動は初めて。地域にとっても、チームにとっても、自分にとってもよきプロジェクトになるよう頑張りたい。

くずぽんさん(コピーライター)

広告代理店勤務。プロボノプロジェクト参加は4度目。自分たちの手で地域を盛り上げようとする方々の熱量に触れ、自分自身に喝を入れたい。

はたしさん(グラフィックデザイナー)

フリーランスのグラフィックデザイナー。自分のスキルを高めて誰かの力になりたいと思い、プロボノ初参加。出身地千葉のお役に立てれば。

地域団体

地域概要

房総半島の東沿岸に位置し、海、山、里が一体となった豊かな環境に移住希望者の視線が集まるいすみ市。2017年、学校給食の全量有機米化を実現。

団体概要

2008年設立。移住相談、空き家・空き地管理といった市民の暮らしサポートのほか、地域の情報発信や環境保全活動にも注力。

プロジェクト概要

学校給食有機化への地域外からの関心は高いものの、地域内での認知、販路はいまだ限定的。周知と巻き込みのツールとなるパンフレットを制作する。

必要なのは団体側からの答えではなく、「自分たちの俯瞰の目線」であるという出発点に立ったプロボノチーム。ここからは、「自分たちのとらえるいすみオーガニック」を分解し、構築していく。チーム内の議論は週次ミーティングのみでは追いつかず、連日、チャットツールSlack上で仮説の提案と修正を積み重ねた末、マーケティング戦略提案、さらにクリエイティブチームによる制作プラン提案へと進んでいった。

プロボノチーム

TEDさん(プロジェクトマネジャー)

自動車部品メーカー勤務。プロボノ初参加。新しい環境で刺激を得て自分のできることの幅を広げ、人やコミュニティの役に立ちたい。

きんしょうさん(マーケッター)

化粧品メーカー勤務。活動地、いすみ市のある千葉県内在住。活動を通じ、今後、自分が地元や地域にどう関わっていくべきなのかを考えたい。

すぎさん(マーケッター)

人材サービス業勤務。仕事とは違う世界を広げたいと思い、初参加。協働の楽しさを味わいながら、地域とチームの役立っていきたい。

みっきーさん(マーケッター)

金融機関勤務。非営利的な活動は初めて。地域にとっても、チームにとっても、自分にとってもよきプロジェクトになるよう頑張りたい。

くずぽんさん(コピーライター)

広告代理店勤務。プロボノプロジェクト参加は4度目。自分たちの手で地域を盛り上げようとする方々の熱量に触れ、自分自身に喝を入れたい。

はたしさん(グラフィックデザイナー)

フリーランスのグラフィックデザイナー。自分のスキルを高めて誰かの力になりたいと思い、プロボノ初参加。出身地千葉のお役に立てれば。

地域団体

地域概要

房総半島の東沿岸に位置し、海、山、里が一体となった豊かな環境に移住希望者の視線が集まるいすみ市。2017年、学校給食の全量有機米化を実現。

団体概要

2008年設立。移住相談、空き家・空き地管理といった市民の暮らしサポートのほか、地域の情報発信や環境保全活動にも注力。

プロジェクト概要

学校給食有機化への地域外からの関心は高いものの、地域内での認知、販路はいまだ限定的。周知と巻き込みのツールとなるパンフレットを制作する。

←(2)へ

いすみライフスタイル研究所(以下、いラ研)への二度目の訪問で得た気づきは、チームで唯一のコピーライターとしてパンフレットの編集・執筆を担う葛谷晴子(くずぽん)さんにとっても、理解の糸口となったといいます。

「プロジェクトの立ち上げ当初は、支援先であるいラ研さんの“いすみオーガニック”という活動はすばらしいから応援してね!という主旨でパンフレットを作るものと思っていましたが、その核となるメッセージが、なかなか見えてきませんでした。 でも、そこから理解を進めていけたのは、いラ研の江崎さんからいただいた、『“プロボノチームがとらえたいすみオーガニック”をパンフレットにしてほしい』という言葉があったからです。いすみオーガニックという運動の主体は、実はいラ研さんではなく、一人ひとりの農業生産者や役所の方たちなのではないか。パンフレットの発注者はいラ研さんだけれど、彼らは自分たちの活動としていすみオーガニックをアピールしたいわけではなく、むしろこの活動の主体者たちを応援する立場なのではないか、と。いラ研の皆さんは、当初から、農業生産者の方へのインタビューの声を届けたいとおっしゃっていましたが、その意図がようやく腑に落ちました」

知って、考えて、感じてもらういすみオーガニック

では、“プロボノチームがとらえたいすみオーガニック”とはどのようなものか。誰に向け、何を伝え、どこを目指してパンフレットを作るのか。マーケッターの3人を中心に大きなビジョンを描きつつ、ここまでのヒアリングや調査の内容を咀嚼。さらに、葛谷さんや、デザイン担当の高畑ひろみ(はたし)さんによる誌面構成の視点も交えながら、コンセプトの策定が進んでいきました。 迎えた11月22日、プロジェクトマネジャーの辻崇(TED)さん、マーケッターの山本欽章(きんしょう)さん、林幹央(みっきー)さんの3人がいラ研事務所を再訪し、マーケティング戦略提案に臨みました。

オンライン参加のクリエイティブチームも交えて行われたマーケティング戦略提案

以下は提案の概要です。

--------------

◆パンフレットの目的
「いすみ市民に“いすみオーガニック”に関連する活動・トピックスを知って、考えて、感じてもらう」

このパンフレットは、読み手による有機農産物の購買など、具体的なアクションを求めるのではなく、まずはいすみオーガニックという活動を認知してもらい、自ら考え、感じてもらうことを目的とする。

◆フェーズ1の役割
いすみ市の活性化を目指す“いすみオーガニック”のロードマップには、大きく3つのフェーズがあると想定。
フェーズ1=市内へのPR/市民の認知向上
フェーズ2=市外へのアピール/移住者の呼び込み
フェーズ3=独自の立ち位置で生き残る自治体へ/いすみオリジナルの確立

このうち、パンフレットが目指すのは、フェーズ1「市民の認知向上」の実現。いラ研やいすみ市行政は未来を見据えて活動しているが、まずは市民一人ひとりの “今”につながる情報を届け、知ってもらうことが肝要。

◆いすみオーガニックの主要3テーマをコンテンツに(計8ページ想定)
①過去(実績)=いすみ市の学校給食米の有機化
②現在(進行形の挑戦)=地産地消のオーガニック商店「いすみや」の誕生
③未来=有機農法の課題と今後の発展

この3テーマを、いすみオーガニック運動を支える人々の声を紹介しながら展開する。

--------------

この提案は、プレゼンを受けたいラ研理事長の高原和江さん、副理事長の江崎亮さんから、好評をもって迎えられました。

「市民の方たちの誰もが、環境や農業について深く考えてくれたら、もちろん一番いいのですが、なかなかそうはいきません。だから、このパンフレットの『まずは知ってもらう』というコンセプトはとても大切。読んだ方たちが、それぞれの立ち位置で、私もこの取り組みに加わってみようとか、がんばっているこの農業生産者さんの野菜を探してみようとか、“自分が踏み出せる一歩”を見つけてくれるとよいです。いすみオーガニックの運動は、私たちだけでできることではありませんから、近隣市町村も含め、ここから波及していってほしい」(高原さん)

「私たちの団体は、私たちの目の前のことで精一杯というのが実情ですから、こうして外の方たちの目線で、私たちの活動の意義を客観的に整理し、評価していただけるのはありがたいこと。いすみにいる私たちではなく、皆さんの視点で発信いただくことが大事です」(江崎さん)

内容の細かな調整は生じたものの、全体のコンセプトや誌面構成については、大筋で合意に至ったいラ研とプロボノチーム。安堵とともに、ここから具体的な誌面制作プランへと移っていきます。

“声”で構成する全12ページ

団体の希望を受け、パンフレットには、夷隅(いすみ)小学校5年生の「総合的な学習の時間」の中で2016年から行ってきた「いすみ教育ファーム」の紹介、そして学校給食への有機野菜の導入を紹介する記事も加えることに。それらを反映し、パンフレットは計12ページで構成することになりました。

コピーライターの葛谷さんは、ここまでマーケッターチームが積み上げてきたヒアリング、例えばさまざまな立場の農業生産者の人たちや、長年、環境保全活動に取り組んできた房総野生生物研究所の主宰者で、現在はいラ研の理事を務める手塚幸夫さん、そして「いすみオーガニックの活動における行政サイドのキーマン」としていラ研のメンバーも信頼を寄せる、いすみ市農林課の鮫田晋さんなどの話を丹念に読み返し、その多様な声をベースに12ページの詳細な構成案を作成。12月13日、改めていラ研へ赴いて提案を行い、合意に至りました。

実際のパンフレット制作に向けて大きく前進した制作プラン提案
「いすみや」へも訪問。学校給食に採用されているのと同じ圃場、同じ農法でつくられた有機米も販売されている

増ページに伴い、作業量が大幅に増すことになった葛谷さんですが、このころには、制作方針への迷いは払しょくされていたといいます。

「マーケッターチームが、このパンフレットの目的を“いすみオーガニックに関連する活動・トピックスを知って、考えて、感じてもらうこと”と定義してくれたことで、私の中の疑問への答えも明確になったんです。つまり、このパンフレットのメッセージは『いすみオーガニックはすばらしい』ではなく、『みんなも知って、一緒に考えて!』なのだと。そこさえ見えれば、あとは集めた情報をどう編集していくかだから、悩むこともありませんでした」

ここから原稿執筆、デザインと作業の山場に差し掛かるプロボノチームは、各々に与えられた役割を超え、サポートし合いながら、ゴールへと走ります。

【プロジェクト進展】
11月1日〜21日 主にマーケティングチームによるマーケティング戦略提案準備
11月7日〜12月12日 プロボノチーム週次ミーティング(オンライン)
11月22日 現地訪問(団体へのマーケティング戦略中間提案・農業生産者といすみ市役所へのヒアリング)
11月22日〜12月12日 主にクリエイティブチームによる制作プラン提案準備
12月13日 現地訪問(団体への制作プラン提案・いすみや取材・関係者へのヒアリング)

→最終話へ
(都市の社会人向け)