河北潟流域の環境保全と地域活性化が両立する、新しいプログラムの提案 (2)

石川県河北潟

NPO法人 河北潟湖沼研究所

マーケティング基礎調査

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河北潟流域に新しい循環を

これまで河北潟湖沼研究所は、環境NPOとして、干拓され自然環境が損なわれた河北潟で、 四半世紀にわたりゴミの清掃や外来植物の除去などの活動をしてきました。しかし、水質の改善は志半ばです。

「潟に流れ込むいくつもの川の水がきれいにならないと水質は改善しない」

そこで3年前から、河北潟に流れ込む川と周辺地域を“河北潟流域”と捉え、エコツアー「河北潟流域ツアー」(以下、流域ツアー)を展開しています。これまでに5回開催し、毎回30人ほどが参加。助成金などを活用して運営している現在の参加費は500円ですが、 今後も継続的に運営するためには、参加費を上げる、参加者を増やす、他で収益を確保するなど、費用を工面する必要があります。

この流域ツアーでは、参加者に毎回アンケートを行っています。このアンケートの分析や、関係者へのヒアリングを行い、流域ツアーのブラッシュアップ、収益を含めた運営の最適化のアイディアを提供することが、今回のプロジェクトのゴールです。

河北潟をきれいにするというビジョンを達成するアイディアなら、流域ツアーにこだわらずに提案してほしいという高橋さん。

「地域の中で新しい循環を生み出したい。環境保全をしながら地域の活性化をしていければと思っています。以前、プロボノをお願いしたときも*1、チームの智恵で活動の幅がぐんと広がりました。みなさんに河北潟に来て感じてもらい、『もっとこんなことをしたらいいのでは?』という率直な意見、我々が考えもつかないようなアイディアをどんどん出してください」

*1  2018年度、NPO法人 サービスグラントのプロボノチームと「マーケティング基礎調査」で協働

河北潟流域ツアーに参加

プロボノチームは、2週にわたり現地を訪問。まずは10月18日に行われた流域ツアーに山竹さん(やまちゃん)と野田さん(のだちゃん)が参加しました。

今回のコースは、河北潟に流れ込む河川のひとつ、“津幡川”下流域の約5㎞。新型コロナウイルス対策として、従来のバスツアーから歩いてのツアーに変更されています。プロボノチーム以外の参加者は、親子連れや大学院生など5組8人です。

ツアー前日、河北潟湖沼研究所の事務所を訪れた2人は、河北潟の歴史や、水質汚濁の原因、問題点、理想の河北潟の環境などについてヒアリングしました。そうした視点も持ちつつ、流域ツアーの魅力、改善点などを洗い出していきます。

湧き水を訪ねて喉を潤したり、用水路でシジミ、カエル、エビなど生き物を捕まえて観察したり。津幡川の下流域では、今と昔の地図を見比べながら、河川の変遷について教えてもらいました。最終目的地の河北潟で楽しんだのはバードウォッチング。

野田さんは「自然に触れながら河北潟の歴史を学ぶことができて、まさに大人の社会科見学でした」。山竹さんも「途中の説明も丁寧でわかりやすかったし、河北潟の歴史やバードウォッチングが興味深かったです」

河北潟流域ツアーで見学した水門

一方で、改善点として2人ともあげたのは、ツアーの対象者を絞り込んだ方がよいということでした。子どもは生き物、大人は歴史と興味の対象が違い、歩くスピードも違います。対象を絞り込むことで、テーマやルート・訪問先、所要時間など、さらに効果的に組めるのでは、としました。

プロボノチーム、河北潟を体感する

翌週の10月24、25日には、イベント「河北潟自然再生まつり」に参加するため、プロボノチーム全員で訪問。

24日はイベントの準備。会場で販売する“すずめ野菜”や米の袋詰めです。すずめ野菜とは、河北潟流域で繁茂して問題になっている外来植物“チクゴスズメノヒエ”を堆肥化し、河北潟湖沼研究所が、それを利用して無農薬で栽培している野菜です。金沢駅前で開催しているマルシェでも販売し、固定のファンもいる野菜に育っています。米は、河北潟湖沼研究所と連携している農事組合法人で、河北潟で米やれんこんの生産を行うOneが栽培したもの。メンバーは袋詰め作業をしながら、Oneのスタッフから河北潟の昔の姿や農業についても聞きました。

イベントで販売するすずめ野菜を袋詰め

25日の「河北潟自然再生まつり」では、昔、河北潟で漁をしていた漁師による投網投げ大会や、河北潟に繁茂する外来植物セイタカアワダチソウの抜き取り大会、クイズを解きながら公園内を自然観察するオリエンテーリング、カヌー体験などが行われました。どれも河北潟を知ってもらうためのプログラム。プロボノチームは、すずめ野菜の販売のお手伝いをしながら、これらを見学・体験。プロジェクトのヒントになったようです。

また、レンタカーで河北潟の見どころもまわりました。「冬ソナの道」とも呼ばれるメタセコイアの並木道、ここで搾った牛乳を使ったソフトクリームが名物の牧場、河北潟の水を間近で感じることができる石川県津幡漕艇競技場、河北潟で取れた野菜や特産品を販売する道の駅内灘サンセットパーク。

冬ソナの道を見学

ハーブ農園ペザンでは、代表の澤邉友彦さんに河北潟での農業について聞くことができました。

「河北潟干拓地は大規模農場が多く、大型機械を使います。観光客があまりにたくさんになると、危険ですから農作業が滞ってしまう。例えば、河北潟で昔ながらの漁業を復活させたいということであれば、僕らも協力したいですね」

こうして、2週にわたる訪問で河北潟を見て知ることができたメンバーたち。河北潟湖沼研究所の思い、連携する人たちや河北潟に関わる人たちの思い、河北潟の風景、そして空気感。「来てよかった。やっぱり来てみないとわからないことが多いですね」と、メンバーは、それぞれ訪問の手応えを感じていました。

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10月5日、プロジェクトのキックオフミーティングはオンラインで行われた。このミーティングの目的は、プロジェクトのミッションを深く共有すること。まずはミッションの背景を理解するため、プロボノチームは、NPO法人 河北潟湖沼研究所側から参加した理事長の高橋久さん、スタッフの川原奈苗さんに、団体のビジョンとその活動、河北潟の現状などについて聞いていく。

プロボノチーム

ようこさん(プロジェクトマネジャー)

ネット関連事業のマーケティング・PR部門の管理職。自分の経験を生かし社会貢献したいと参加。プロボノからはじまる人とのつながりにも期待。

まちこさん(マーケッター)

食品メーカーで商品開発・ブランディングを担当。長年、農業や地域を応援する仕事をしてきたが、もう少し深く地域に関わり貢献したいと参加。

のだちゃん(マーケッター)

自動車メーカーで原価・予算管理を担当。これまでの経験を地域貢献に生かしたいと参加。他業種の人との繋がりにも期待している。

やまちゃん(マーケッター)

企業経営のリサーチ・分析が専門。プロボノ活動は3回目。地域活性化に興味があり、地域やチームとつながりができればと参加した。

けんちゃん(マーケッター)

地域創生×再生可能エネルギーの新規事業開発に従事。地方創生を志し、昨年、社会人大学院を卒業。学んだ知識を実践し社会に役立てていきたいと参加。

地域団体

地域概要

金沢市をはじめ2市2町にまたがる河北潟。干拓地では大規模農業が営まれ、酪農も盛ん。また県内でも有数の野鳥の宝庫としても知られている。

団体概要

河北潟の環境を改善しようと1994年に設立。水質や自然の調査研究、保全活動、環境に配慮した農作物の生産販売など幅広い活動を行っている。

プロジェクト概要

河北潟の水質汚濁などの問題を広く知ってもらうために、これまでのエコツアーを見直し、環境保全と地域活性化が両立する新エコプログラムの提案を行う。

10月5日、プロジェクトのキックオフミーティングはオンラインで行われた。このミーティングの目的は、プロジェクトのミッションを深く共有すること。まずはミッションの背景を理解するため、プロボノチームは、NPO法人 河北潟湖沼研究所側から参加した理事長の高橋久さん、スタッフの川原奈苗さんに、団体のビジョンとその活動、河北潟の現状などについて聞いていく。

プロボノチーム

ようこさん(プロジェクトマネジャー)

ネット関連事業のマーケティング・PR部門の管理職。自分の経験を生かし社会貢献したいと参加。プロボノからはじまる人とのつながりにも期待。

まちこさん(マーケッター)

食品メーカーで商品開発・ブランディングを担当。長年、農業や地域を応援する仕事をしてきたが、もう少し深く地域に関わり貢献したいと参加。

のだちゃん(マーケッター)

自動車メーカーで原価・予算管理を担当。これまでの経験を地域貢献に生かしたいと参加。他業種の人との繋がりにも期待している。

やまちゃん(マーケッター)

企業経営のリサーチ・分析が専門。プロボノ活動は3回目。地域活性化に興味があり、地域やチームとつながりができればと参加した。

けんちゃん(マーケッター)

地域創生×再生可能エネルギーの新規事業開発に従事。地方創生を志し、昨年、社会人大学院を卒業。学んだ知識を実践し社会に役立てていきたいと参加。

地域団体

地域概要

金沢市をはじめ2市2町にまたがる河北潟。干拓地では大規模農業が営まれ、酪農も盛ん。また県内でも有数の野鳥の宝庫としても知られている。

団体概要

河北潟の環境を改善しようと1994年に設立。水質や自然の調査研究、保全活動、環境に配慮した農作物の生産販売など幅広い活動を行っている。

プロジェクト概要

河北潟の水質汚濁などの問題を広く知ってもらうために、これまでのエコツアーを見直し、環境保全と地域活性化が両立する新エコプログラムの提案を行う。

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河北潟流域に新しい循環を

これまで河北潟湖沼研究所は、環境NPOとして、干拓され自然環境が損なわれた河北潟で、 四半世紀にわたりゴミの清掃や外来植物の除去などの活動をしてきました。しかし、水質の改善は志半ばです。

「潟に流れ込むいくつもの川の水がきれいにならないと水質は改善しない」

そこで3年前から、河北潟に流れ込む川と周辺地域を“河北潟流域”と捉え、エコツアー「河北潟流域ツアー」(以下、流域ツアー)を展開しています。これまでに5回開催し、毎回30人ほどが参加。助成金などを活用して運営している現在の参加費は500円ですが、 今後も継続的に運営するためには、参加費を上げる、参加者を増やす、他で収益を確保するなど、費用を工面する必要があります。

この流域ツアーでは、参加者に毎回アンケートを行っています。このアンケートの分析や、関係者へのヒアリングを行い、流域ツアーのブラッシュアップ、収益を含めた運営の最適化のアイディアを提供することが、今回のプロジェクトのゴールです。

河北潟をきれいにするというビジョンを達成するアイディアなら、流域ツアーにこだわらずに提案してほしいという高橋さん。

「地域の中で新しい循環を生み出したい。環境保全をしながら地域の活性化をしていければと思っています。以前、プロボノをお願いしたときも*1、チームの智恵で活動の幅がぐんと広がりました。みなさんに河北潟に来て感じてもらい、『もっとこんなことをしたらいいのでは?』という率直な意見、我々が考えもつかないようなアイディアをどんどん出してください」

*1  2018年度、NPO法人 サービスグラントのプロボノチームと「マーケティング基礎調査」で協働

河北潟流域ツアーに参加

プロボノチームは、2週にわたり現地を訪問。まずは10月18日に行われた流域ツアーに山竹さん(やまちゃん)と野田さん(のだちゃん)が参加しました。

今回のコースは、河北潟に流れ込む河川のひとつ、“津幡川”下流域の約5㎞。新型コロナウイルス対策として、従来のバスツアーから歩いてのツアーに変更されています。プロボノチーム以外の参加者は、親子連れや大学院生など5組8人です。

ツアー前日、河北潟湖沼研究所の事務所を訪れた2人は、河北潟の歴史や、水質汚濁の原因、問題点、理想の河北潟の環境などについてヒアリングしました。そうした視点も持ちつつ、流域ツアーの魅力、改善点などを洗い出していきます。

湧き水を訪ねて喉を潤したり、用水路でシジミ、カエル、エビなど生き物を捕まえて観察したり。津幡川の下流域では、今と昔の地図を見比べながら、河川の変遷について教えてもらいました。最終目的地の河北潟で楽しんだのはバードウォッチング。

野田さんは「自然に触れながら河北潟の歴史を学ぶことができて、まさに大人の社会科見学でした」。山竹さんも「途中の説明も丁寧でわかりやすかったし、河北潟の歴史やバードウォッチングが興味深かったです」

河北潟流域ツアーで見学した水門

一方で、改善点として2人ともあげたのは、ツアーの対象者を絞り込んだ方がよいということでした。子どもは生き物、大人は歴史と興味の対象が違い、歩くスピードも違います。対象を絞り込むことで、テーマやルート・訪問先、所要時間など、さらに効果的に組めるのでは、としました。

プロボノチーム、河北潟を体感する

翌週の10月24、25日には、イベント「河北潟自然再生まつり」に参加するため、プロボノチーム全員で訪問。

24日はイベントの準備。会場で販売する“すずめ野菜”や米の袋詰めです。すずめ野菜とは、河北潟流域で繁茂して問題になっている外来植物“チクゴスズメノヒエ”を堆肥化し、河北潟湖沼研究所が、それを利用して無農薬で栽培している野菜です。金沢駅前で開催しているマルシェでも販売し、固定のファンもいる野菜に育っています。米は、河北潟湖沼研究所と連携している農事組合法人で、河北潟で米やれんこんの生産を行うOneが栽培したもの。メンバーは袋詰め作業をしながら、Oneのスタッフから河北潟の昔の姿や農業についても聞きました。

イベントで販売するすずめ野菜を袋詰め

25日の「河北潟自然再生まつり」では、昔、河北潟で漁をしていた漁師による投網投げ大会や、河北潟に繁茂する外来植物セイタカアワダチソウの抜き取り大会、クイズを解きながら公園内を自然観察するオリエンテーリング、カヌー体験などが行われました。どれも河北潟を知ってもらうためのプログラム。プロボノチームは、すずめ野菜の販売のお手伝いをしながら、これらを見学・体験。プロジェクトのヒントになったようです。

また、レンタカーで河北潟の見どころもまわりました。「冬ソナの道」とも呼ばれるメタセコイアの並木道、ここで搾った牛乳を使ったソフトクリームが名物の牧場、河北潟の水を間近で感じることができる石川県津幡漕艇競技場、河北潟で取れた野菜や特産品を販売する道の駅内灘サンセットパーク。

冬ソナの道を見学

ハーブ農園ペザンでは、代表の澤邉友彦さんに河北潟での農業について聞くことができました。

「河北潟干拓地は大規模農場が多く、大型機械を使います。観光客があまりにたくさんになると、危険ですから農作業が滞ってしまう。例えば、河北潟で昔ながらの漁業を復活させたいということであれば、僕らも協力したいですね」

こうして、2週にわたる訪問で河北潟を見て知ることができたメンバーたち。河北潟湖沼研究所の思い、連携する人たちや河北潟に関わる人たちの思い、河北潟の風景、そして空気感。「来てよかった。やっぱり来てみないとわからないことが多いですね」と、メンバーは、それぞれ訪問の手応えを感じていました。

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