河北潟流域の環境保全と地域活性化が両立する、新しいプログラムの提案 (3)

石川県河北潟

NPO法人 河北潟湖沼研究所

マーケティング基礎調査

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訪問から生まれた仮説アイディア

かつて河北潟でウナギやシジミの漁をしていたことに着目した吉森健人さん(けんちゃん)。「漁業を復活させるクラウドファンディングなどだと、色々な人に興味を持ってもらえそう」

山竹さん(やまちゃん)は「1回だけの流域ツアーではなく、連続した講座にした方がより深く知ってもらえるのではと思いました」

本職で農業・食に関わってきた井上麻知子(まちこ)さんは、これまでの経験を生かし、「流域ツアーから物販へとつなげる工夫や、食を切り口にしたものを考えたいと思います」

野田さん(のだちゃん)は「自然再生まつりでしていたクイズラリーとか、親子対象の生き物ツアーが面白そう」

ここから、それぞれが考えた仮説アイディアに肉付けしていきます。ターゲット、効果、実現に向けた課題について、ミーティングで議論・検討していきました。

現地訪問で河北潟を眺めながらミーティングするメンバー

河北潟流域ツアーは満足度が高い

アイディアを検討する作業に先だって行ったのが、2018年から5回開催された流域ツアーのアンケート分析です。

ツアーの内容に関してはどれも「とてもよい」「よい」が9割を越え、中には全員がそう答えたものもありました。「また参加したい」もいずれも8割で、満足度は非常に高いことがわかりました。「今後どのようなツアーに参加したいか」という問いには、野鳥・生物・植物などの「自然観察」が最も多く、次いで、草刈り・ビオトープづくり・水質保全・里山保全などの「環境保全活動」が多いことが分かりました。そこから、まずは「河北潟の自然を知るために」参加し、その自然を守るための「保全活動をしたい」といった行動になるのでは、と仮説が立てられました。

一方で、適正な参加費としては500〜1000円といった現状と変わらない回答が多く、継続的な運営には工夫が必要ということも分かりました。

広大な農地が広がる河北潟干拓地

3つの課題

現地訪問とアンケート分析、ミーティングでの議論を重ねるうち、現在の流域ツアーの課題が見えてきました。それは大きく3つに分けられます。

◆1つ目の課題「新規顧客・ライト層をどう獲得するか」
ミッションを達成する第一歩は、河北潟やその環境について広く知ってもらうこと。流域の植物・生物に興味のあるディープな顧客だけでなく、ライト層・新規顧客をいかに獲得するかが第1の課題です。

◆2つ目の課題「ツアー参加者や地域住民とつながりを強くすること」
ツアーに参加し、河北潟を知ってもらったその後の行動につながる仕掛けが必要です。参加した人とつながり続け、活動することが、河北潟ファンの輪を広げます。また、継続的に運営するにはマンパワーが不足しています。コミュニティやボランティアスタッフなどどんどん巻き込む必要があります。

◆3つ目の課題「流域ツアーを続けるための収益化」
ツアースタッフの費用がまかなえるだけの参加費を得る工夫。ツアー以外で収益を得る工夫が必要で、これがなければ継続的に安定した運営が行えません。

ここからは2チームに分け、課題1と課題2を各チームが、3つ目の収益化については、両チーム共通の課題として考えていくことになりました。

未来につながる河北潟流域ツアーの新しい形

11月17日、プロボノチームから河北潟湖沼研究所への中間提案が行われました。アンケートの分析結果と課題について報告。仮説アイディアの中から、課題解決を期待できるものを「未来につながる河北潟流域ツアーの新しい形」候補としました。

1つ目の課題、新規顧客・ライト層の獲得のための施策アイディアは「オンラインエコツアー」と「スタンプラリー」。「オンラインエコツアー」は全国の好奇心ある人たちをターゲットに、事前に特産品を届け、後日、その地のオンラインツアーで地域情報を伝えます。特産品の先にあるストーリーに興味を持ってもらい、河北潟の活動への関心につなげていきます。

「スタンプラリー」は、お土産購入やイベント参加でもらえるスタンプを集め、河北潟を周遊してもらう仕掛け。周辺の各団体との連携強化、スタッフの負担軽減も期待できます。

2つ目の課題、ツアー参加者や地域住民とのつながりを強くするための施策アイディアは、「連続ツアー」「連続講座」です。これは過去の流域ツアーのアンケートで「また参加したい」という声が多かったことを重視したもの。1テーマで複数回開催することで深掘りしたり、いくつものテーマで連続開催することで河北潟の全体像を知ってもらったり。何度も会うことでつながりが強くなると共に、継続的に河北潟湖沼研究所に協力してくれる人材も発掘できるかもしれません。

3つ目の課題、収益化に関しては、「流域ツアーと物販の連動」をしたらどうかという施策アイディアも提案しました。流域ツアーをすずめ野菜や元気米などのお土産付きにすることで、値上がり感なく参加費を上げることができ、むしろ満足度が高くなる可能性があります。また、ツアー後に再購入となれば、収益アップにつながるとともに、その参加者とつながりつづけることができます。

河北潟湖沼研究所で販売しているお米

中間提案を受けた河北潟湖沼研究所理事長・高橋久さんは、「私たちが考えつかないアイディアがあったり、整理できていなかった部分が整理されていました。このまま引き続き、アイディアを具体的にしていただければと思います」と、ここまでの方向性に同意。

さぁ、プロジェクトも折り返し地点。最終報告では、こうしたアイディアを中心に深掘りしていきます。チームは11月27日〜30日、関連スポットの調査と関係者へのヒアリングを行うため、再度、河北潟を訪問します。彼らが考える「未来につながる河北潟流域ツアーの新しい形」はどんな形になるのか。最終報告が楽しみです。

【プロジェクト進展】
10月4日 初顔合わせ(オンライン)、チームの定例ミーティングは毎週火曜夜に1時間半行うことに。
10月5日 団体とプロボノチームによるキックオフミーティング
10月5日〜11月4日 資料分析(過去の河北潟流域ツアーアンケート)
10月17日 河北潟湖沼研究所(石川県津幡町)訪問
10月18日 河北潟流域ツアー(津幡川周辺)参加
10月24日 河北潟湖沼研究所・農事法人Oneにて農業体験(農作物の袋詰め)
10月25日 河北潟自然再生まつり参加、河北潟周遊
10月27日〜11月4日 仮説アイディア立案
11月17日 中間提案

→最終話へ

10月、2週にわたった河北潟訪問から戻ったプロボノチームは、オンラインミーティング、メール、LINEなどで議論を深めていく。まずは、訪問の際に得た情報や感じたことから、それぞれが仮説アイディアを脹らませていった。

プロボノチーム

ようこさん(プロジェクトマネジャー)

ネット関連事業のマーケティング・PR部門の管理職。自分の経験を生かし社会貢献したいと参加。プロボノからはじまる人とのつながりにも期待。

まちこさん(マーケッター)

食品メーカーで商品開発・ブランディングを担当。長年、農業や地域を応援する仕事をしてきたが、もう少し深く地域に関わり貢献したいと参加。

のだちゃん(マーケッター)

自動車メーカーで原価・予算管理を担当。これまでの経験を地域貢献に生かしたいと参加。他業種の人との繋がりにも期待している。

やまちゃん(マーケッター)

企業経営のリサーチ・分析が専門。プロボノ活動は3回目。地域活性化に興味があり、地域やチームとつながりができればと参加した。

けんちゃん(マーケッター)

地域創生×再生可能エネルギーの新規事業開発に従事。地方創生を志し、昨年、社会人大学院を卒業。学んだ知識を実践し社会に役立てていきたいと参加。

地域団体

地域概要

金沢市をはじめ2市2町にまたがる河北潟。干拓地では大規模農業が営まれ、酪農も盛ん。また県内でも有数の野鳥の宝庫としても知られている。

団体概要

河北潟の環境を改善しようと1994年に設立。水質や自然の調査研究、保全活動、環境に配慮した農作物の生産販売など幅広い活動を行っている。

プロジェクト概要

河北潟の水質汚濁などの問題を広く知ってもらうために、これまでのエコツアーを見直し、環境保全と地域活性化が両立する新エコプログラムの提案を行う。

10月、2週にわたった河北潟訪問から戻ったプロボノチームは、オンラインミーティング、メール、LINEなどで議論を深めていく。まずは、訪問の際に得た情報や感じたことから、それぞれが仮説アイディアを脹らませていった。

プロボノチーム

ようこさん(プロジェクトマネジャー)

ネット関連事業のマーケティング・PR部門の管理職。自分の経験を生かし社会貢献したいと参加。プロボノからはじまる人とのつながりにも期待。

まちこさん(マーケッター)

食品メーカーで商品開発・ブランディングを担当。長年、農業や地域を応援する仕事をしてきたが、もう少し深く地域に関わり貢献したいと参加。

のだちゃん(マーケッター)

自動車メーカーで原価・予算管理を担当。これまでの経験を地域貢献に生かしたいと参加。他業種の人との繋がりにも期待している。

やまちゃん(マーケッター)

企業経営のリサーチ・分析が専門。プロボノ活動は3回目。地域活性化に興味があり、地域やチームとつながりができればと参加した。

けんちゃん(マーケッター)

地域創生×再生可能エネルギーの新規事業開発に従事。地方創生を志し、昨年、社会人大学院を卒業。学んだ知識を実践し社会に役立てていきたいと参加。

地域団体

地域概要

金沢市をはじめ2市2町にまたがる河北潟。干拓地では大規模農業が営まれ、酪農も盛ん。また県内でも有数の野鳥の宝庫としても知られている。

団体概要

河北潟の環境を改善しようと1994年に設立。水質や自然の調査研究、保全活動、環境に配慮した農作物の生産販売など幅広い活動を行っている。

プロジェクト概要

河北潟の水質汚濁などの問題を広く知ってもらうために、これまでのエコツアーを見直し、環境保全と地域活性化が両立する新エコプログラムの提案を行う。

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訪問から生まれた仮説アイディア

かつて河北潟でウナギやシジミの漁をしていたことに着目した吉森健人さん(けんちゃん)。「漁業を復活させるクラウドファンディングなどだと、色々な人に興味を持ってもらえそう」

山竹さん(やまちゃん)は「1回だけの流域ツアーではなく、連続した講座にした方がより深く知ってもらえるのではと思いました」

本職で農業・食に関わってきた井上麻知子(まちこ)さんは、これまでの経験を生かし、「流域ツアーから物販へとつなげる工夫や、食を切り口にしたものを考えたいと思います」

野田さん(のだちゃん)は「自然再生まつりでしていたクイズラリーとか、親子対象の生き物ツアーが面白そう」

ここから、それぞれが考えた仮説アイディアに肉付けしていきます。ターゲット、効果、実現に向けた課題について、ミーティングで議論・検討していきました。

現地訪問で河北潟を眺めながらミーティングするメンバー

河北潟流域ツアーは満足度が高い

アイディアを検討する作業に先だって行ったのが、2018年から5回開催された流域ツアーのアンケート分析です。

ツアーの内容に関してはどれも「とてもよい」「よい」が9割を越え、中には全員がそう答えたものもありました。「また参加したい」もいずれも8割で、満足度は非常に高いことがわかりました。「今後どのようなツアーに参加したいか」という問いには、野鳥・生物・植物などの「自然観察」が最も多く、次いで、草刈り・ビオトープづくり・水質保全・里山保全などの「環境保全活動」が多いことが分かりました。そこから、まずは「河北潟の自然を知るために」参加し、その自然を守るための「保全活動をしたい」といった行動になるのでは、と仮説が立てられました。

一方で、適正な参加費としては500〜1000円といった現状と変わらない回答が多く、継続的な運営には工夫が必要ということも分かりました。

広大な農地が広がる河北潟干拓地

3つの課題

現地訪問とアンケート分析、ミーティングでの議論を重ねるうち、現在の流域ツアーの課題が見えてきました。それは大きく3つに分けられます。

◆1つ目の課題「新規顧客・ライト層をどう獲得するか」
ミッションを達成する第一歩は、河北潟やその環境について広く知ってもらうこと。流域の植物・生物に興味のあるディープな顧客だけでなく、ライト層・新規顧客をいかに獲得するかが第1の課題です。

◆2つ目の課題「ツアー参加者や地域住民とつながりを強くすること」
ツアーに参加し、河北潟を知ってもらったその後の行動につながる仕掛けが必要です。参加した人とつながり続け、活動することが、河北潟ファンの輪を広げます。また、継続的に運営するにはマンパワーが不足しています。コミュニティやボランティアスタッフなどどんどん巻き込む必要があります。

◆3つ目の課題「流域ツアーを続けるための収益化」
ツアースタッフの費用がまかなえるだけの参加費を得る工夫。ツアー以外で収益を得る工夫が必要で、これがなければ継続的に安定した運営が行えません。

ここからは2チームに分け、課題1と課題2を各チームが、3つ目の収益化については、両チーム共通の課題として考えていくことになりました。

未来につながる河北潟流域ツアーの新しい形

11月17日、プロボノチームから河北潟湖沼研究所への中間提案が行われました。アンケートの分析結果と課題について報告。仮説アイディアの中から、課題解決を期待できるものを「未来につながる河北潟流域ツアーの新しい形」候補としました。

1つ目の課題、新規顧客・ライト層の獲得のための施策アイディアは「オンラインエコツアー」と「スタンプラリー」。「オンラインエコツアー」は全国の好奇心ある人たちをターゲットに、事前に特産品を届け、後日、その地のオンラインツアーで地域情報を伝えます。特産品の先にあるストーリーに興味を持ってもらい、河北潟の活動への関心につなげていきます。

「スタンプラリー」は、お土産購入やイベント参加でもらえるスタンプを集め、河北潟を周遊してもらう仕掛け。周辺の各団体との連携強化、スタッフの負担軽減も期待できます。

2つ目の課題、ツアー参加者や地域住民とのつながりを強くするための施策アイディアは、「連続ツアー」「連続講座」です。これは過去の流域ツアーのアンケートで「また参加したい」という声が多かったことを重視したもの。1テーマで複数回開催することで深掘りしたり、いくつものテーマで連続開催することで河北潟の全体像を知ってもらったり。何度も会うことでつながりが強くなると共に、継続的に河北潟湖沼研究所に協力してくれる人材も発掘できるかもしれません。

3つ目の課題、収益化に関しては、「流域ツアーと物販の連動」をしたらどうかという施策アイディアも提案しました。流域ツアーをすずめ野菜や元気米などのお土産付きにすることで、値上がり感なく参加費を上げることができ、むしろ満足度が高くなる可能性があります。また、ツアー後に再購入となれば、収益アップにつながるとともに、その参加者とつながりつづけることができます。

河北潟湖沼研究所で販売しているお米

中間提案を受けた河北潟湖沼研究所理事長・高橋久さんは、「私たちが考えつかないアイディアがあったり、整理できていなかった部分が整理されていました。このまま引き続き、アイディアを具体的にしていただければと思います」と、ここまでの方向性に同意。

さぁ、プロジェクトも折り返し地点。最終報告では、こうしたアイディアを中心に深掘りしていきます。チームは11月27日〜30日、関連スポットの調査と関係者へのヒアリングを行うため、再度、河北潟を訪問します。彼らが考える「未来につながる河北潟流域ツアーの新しい形」はどんな形になるのか。最終報告が楽しみです。

【プロジェクト進展】
10月4日 初顔合わせ(オンライン)、チームの定例ミーティングは毎週火曜夜に1時間半行うことに。
10月5日 団体とプロボノチームによるキックオフミーティング
10月5日〜11月4日 資料分析(過去の河北潟流域ツアーアンケート)
10月17日 河北潟湖沼研究所(石川県津幡町)訪問
10月18日 河北潟流域ツアー(津幡川周辺)参加
10月24日 河北潟湖沼研究所・農事法人Oneにて農業体験(農作物の袋詰め)
10月25日 河北潟自然再生まつり参加、河北潟周遊
10月27日〜11月4日 仮説アイディア立案
11月17日 中間提案

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