目指すはワインを通じたファンづくり〜生産者・醸造者・事業者が三位一体となる具体策を探る (3)

長野県高山村

信州高山村観光協会

マーケティング基礎調査

←(2)へ

高山村の内部・外部環境調査

初回現地訪問で高山村の魅力と可能性に触れた一行は、以降週1回ペースでミーティングを開いて議論を重ね、並行して各メンバーが分担して追加調査を実施していきました。

調査内容は、高山村のワインと観光におけるミクロな現状(=内部環境)と、それらをとりまく村外のマクロな要素(=外部環境)に大きく分かれます。具体的には下記の通りです。

■内部環境

  • ステークホルダーへの追加ヒアリング
  • 観光協会のウェブサイトやSNSのユーザー分析
  • 過去イベント参加者の傾向分析

■外部環境

  • ワイン業界や市場の調査
  • ワイン消費に関するデータ調査
  • 国産ワインに精通する専門家へのヒアリング
  • 国内のワイナリー調査
  • 観光の動向調査
  • コロナ禍におけるテレワークや移住に関する調査

外部環境では、行政や民間のデータ調査もあれば、長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」、ワインジャーナリストやソムリエら専門家へのインタビューなどもありました。数値やグラフ化された定量的なデータだけでなく、業界や現場に精通した人たちの定性的なデータを汲み上げるところにプロボノの本気が表れています。

内部施策・対外的施策の2つの軸で中間提案

調査をもとに施策の検討を進め、12月12日、高山村を再び訪問し中間提案を行いました。

村からは観光協会や役場の職員、ワイン関係者、旅館関係者らが集まった

施策の軸は大きく2つに分かれています。村内部の施策である「ワイン産地としての魅力づくり」と、対外的な施策である「ワインをテーマにしたファンづくり」です。提案は方向性レベルのものから具体的な案までありました。

■ワイン産地としての魅力づくり

よいワイン産地の条件である「魅力あるワイン」「よい飲み手」「よい飲ませ手」「地域でもてなす一体感」について次のような案が出ました。正確には「よい作り手」も条件に含まれますが、今回の提案範囲外としています。

魅力あるワイン

  • 高山村ワインは何でNo.1を目指すのか、ワイナリーを横断して足並みを揃える

よい飲み手

  • 日常的に村民が親しむために、村民向けの試飲会や勉強会を行う

よい飲ませ手

  • 旅館の成功事例を共有、横展開する
  • ハーフボトルや卸価格で仕入れ、提供可能な体制を作る

地域でもてなす一体感

  • ぶどう農家、ワイナリー、旅館、飲食店、観光協会、行政が議論する場を設け、事業者間連携を強化する

■ワインをテーマにしたファンづくり

ターゲットを「県内or首都圏の30代以上、ワイン好きで時間やお金にゆとりがある」と定め、ファンづくりのステップである「認知」「興味関心」「検討」「来訪」「リピート・ファン化」ごとに施策を出しました。

認知

  • 比較的集客力の高い、観光協会サイトの「温泉ページ」にワイン情報を掲載する
  • 畑の様子やワイン関連情報をSNS発信する。また、既来訪者のSNS投稿に対するリアクションを行う

認知〜興味関心

  • ワインイベントの経験豊富な「銀座NAGANO」や、他業者主催のワインイベントとコラボする

興味関心〜検討

  • ワイナリーやぶどう畑、ワイン販売店などの情報を一元化した、ワイン観光マップを作る

来訪

  • タッチポイントを増やすために、観光案内所や宿泊施設、飲食店での試飲提供を行う
  • 観光ニーズの高い「食」とワインを掛け合わせた企画を実施する

リピート・ファン化

  • 既存のイベント(ワインや地場食材を楽しめる秋の「おごっそに乾杯!」)に加えて、閑散期にも独自イベントを実施する
  • 臨時バスやタクシーなど交通網を整備する
  • 限定イベントやクーポンなどのインセンティブを設けた会員制度を作る
一部メンバーはZoomで参加

上記の提案に加えて、ぶどう栽培やワイン醸造関連の「体験プログラム」に特化して話し合う時間も設けられ、主に農家やワイナリー関係者からの意見を聞きました。

ワイナリー関係者からは「年間を通して収穫期以外はラベルを貼る作業なら手伝える。醸造の繁忙期は猫の手も借りたい状況でお客さん対応は難しい」、旅館からは「ぶどうの新芽を天ぷらにして食べると、ふわっとぶどうの香りがする。そのとき、その場でしか味わえないものがある」という意見がありました。
また、ぶどう農家からは「ワイヤー張りを手伝ったもらったときに、『これにぶどうが巻き付いていくんだ』と感動してくれる人がいた。農家にとって地味で単純な作業でも、ワインが生まれるまでの工程に携われるのは価値になり得る」という提案もありました。

農業体験は収穫期に注目されがちですが、人手や忙しさなどを勘案しつつ、収穫以外の工程もコンテンツとしての可能性がありそうです。

追加ヒアリングと畑での作業体験

およそ3時間、スライド80枚分の提案をもって中間提案はお開きとなりました。しかし、これで訪問は終わりません。そのままの足で役場職員や村民へのヒアリングに臨み、翌日はぶどう畑での作業体験、さらにまたヒアリングと充実した2日間を過ごしました。

商店、飲食店、農家、地域おこし協力隊など地元の人たちからヒアリング
農家が剪定した後に、ワイヤーに絡んで残っている枝を取り外す作業を体験

今回の作業体験は収穫に比べるとたしかに“地味”でしたが、それでもみなさん熱中。取り外した枝を花瓶に挿しておくと芽が出るかも、ということでお土産に持って帰る方もいました。

さて次はいよいよ最終提案。1月末までラストスパートをかけます。

【プロジェクト進展】
10月12日〜12月11日 週1回ペースでの定例ミーティングと、調査・分析・追加ヒアリングなど
12月12日 現地訪問1日目(中間提案)
12月13日 現地訪問2日目(農作業体験・ヒアリング)

→最終話へ

現地への初回訪問から2カ月間、毎週火曜21時に行われる定例ミーティングと各自の追加調査を重ねていき、景色がモノトーンになる12月中旬、中間提案の日を迎えた。今回は2カ月間の調査や提案した施策の内容を中心にレポートする。

プロボノチーム

ふじむーさん(プロジェクトマネジャー)

ロボット関連のソフトウェア開発に従事。子どもが大きくなり時間に余裕が持てる今、会社員以外の自分づくりをしたいと思い参加。

ももさん(マーケッター)

CS専門チャンネルで広報・宣伝業務に従事。高山村のキャッチコピー「星とワインとゆ」に惹かれて参加。

キムハルさん(マーケッター)

コンピュータ関連のサービスマネジメントに従事。東日本大震災のボランティアをきっかけに社会貢献活動をしたいと思い参加。

ホセさん(マーケッター)

商標関連の業務管理・総務に従事。本業のキーワードでもある「地方創生」「ブランディング」をソーシャルワークで活かしたいと思い参加。

ふみさん(マーケッター)

ワイン商社のデジタルマーケティングに従事。いつか地元長野に携わる仕事がしたいと思い参加。

ナショさん(マーケッター)

Webメディアの編集に従事。度々訪れ思い入れのある長野で、村おこしを手伝い関係人口になれたらと思い参加。

地域団体

地域概要

長野県の北東部に位置する人口約7千人の村。りんごやぶどうなど果樹栽培が盛んで、温泉郷を訪れる観光客でにぎわう。

団体概要

高山村の産業振興と魅力ある観光地づくりを進めるとともに、観光情報を全国に向けて発信している。

プロジェクト概要

ワインをテーマとした高山村の新たなファンづくりのために、ぶどう生産者・醸造者・観光事業者の具体的な連携方策を提案する。

現地への初回訪問から2カ月間、毎週火曜21時に行われる定例ミーティングと各自の追加調査を重ねていき、景色がモノトーンになる12月中旬、中間提案の日を迎えた。今回は2カ月間の調査や提案した施策の内容を中心にレポートする。

プロボノチーム

ふじむーさん(プロジェクトマネジャー)

ロボット関連のソフトウェア開発に従事。子どもが大きくなり時間に余裕が持てる今、会社員以外の自分づくりをしたいと思い参加。

ももさん(マーケッター)

CS専門チャンネルで広報・宣伝業務に従事。高山村のキャッチコピー「星とワインとゆ」に惹かれて参加。

キムハルさん(マーケッター)

コンピュータ関連のサービスマネジメントに従事。東日本大震災のボランティアをきっかけに社会貢献活動をしたいと思い参加。

ホセさん(マーケッター)

商標関連の業務管理・総務に従事。本業のキーワードでもある「地方創生」「ブランディング」をソーシャルワークで活かしたいと思い参加。

ふみさん(マーケッター)

ワイン商社のデジタルマーケティングに従事。いつか地元長野に携わる仕事がしたいと思い参加。

ナショさん(マーケッター)

Webメディアの編集に従事。度々訪れ思い入れのある長野で、村おこしを手伝い関係人口になれたらと思い参加。

地域団体

地域概要

長野県の北東部に位置する人口約7千人の村。りんごやぶどうなど果樹栽培が盛んで、温泉郷を訪れる観光客でにぎわう。

団体概要

高山村の産業振興と魅力ある観光地づくりを進めるとともに、観光情報を全国に向けて発信している。

プロジェクト概要

ワインをテーマとした高山村の新たなファンづくりのために、ぶどう生産者・醸造者・観光事業者の具体的な連携方策を提案する。

←(2)へ

高山村の内部・外部環境調査

初回現地訪問で高山村の魅力と可能性に触れた一行は、以降週1回ペースでミーティングを開いて議論を重ね、並行して各メンバーが分担して追加調査を実施していきました。

調査内容は、高山村のワインと観光におけるミクロな現状(=内部環境)と、それらをとりまく村外のマクロな要素(=外部環境)に大きく分かれます。具体的には下記の通りです。

■内部環境

  • ステークホルダーへの追加ヒアリング
  • 観光協会のウェブサイトやSNSのユーザー分析
  • 過去イベント参加者の傾向分析

■外部環境

  • ワイン業界や市場の調査
  • ワイン消費に関するデータ調査
  • 国産ワインに精通する専門家へのヒアリング
  • 国内のワイナリー調査
  • 観光の動向調査
  • コロナ禍におけるテレワークや移住に関する調査

外部環境では、行政や民間のデータ調査もあれば、長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」、ワインジャーナリストやソムリエら専門家へのインタビューなどもありました。数値やグラフ化された定量的なデータだけでなく、業界や現場に精通した人たちの定性的なデータを汲み上げるところにプロボノの本気が表れています。

内部施策・対外的施策の2つの軸で中間提案

調査をもとに施策の検討を進め、12月12日、高山村を再び訪問し中間提案を行いました。

村からは観光協会や役場の職員、ワイン関係者、旅館関係者らが集まった

施策の軸は大きく2つに分かれています。村内部の施策である「ワイン産地としての魅力づくり」と、対外的な施策である「ワインをテーマにしたファンづくり」です。提案は方向性レベルのものから具体的な案までありました。

■ワイン産地としての魅力づくり

よいワイン産地の条件である「魅力あるワイン」「よい飲み手」「よい飲ませ手」「地域でもてなす一体感」について次のような案が出ました。正確には「よい作り手」も条件に含まれますが、今回の提案範囲外としています。

魅力あるワイン

  • 高山村ワインは何でNo.1を目指すのか、ワイナリーを横断して足並みを揃える

よい飲み手

  • 日常的に村民が親しむために、村民向けの試飲会や勉強会を行う

よい飲ませ手

  • 旅館の成功事例を共有、横展開する
  • ハーフボトルや卸価格で仕入れ、提供可能な体制を作る

地域でもてなす一体感

  • ぶどう農家、ワイナリー、旅館、飲食店、観光協会、行政が議論する場を設け、事業者間連携を強化する

■ワインをテーマにしたファンづくり

ターゲットを「県内or首都圏の30代以上、ワイン好きで時間やお金にゆとりがある」と定め、ファンづくりのステップである「認知」「興味関心」「検討」「来訪」「リピート・ファン化」ごとに施策を出しました。

認知

  • 比較的集客力の高い、観光協会サイトの「温泉ページ」にワイン情報を掲載する
  • 畑の様子やワイン関連情報をSNS発信する。また、既来訪者のSNS投稿に対するリアクションを行う

認知〜興味関心

  • ワインイベントの経験豊富な「銀座NAGANO」や、他業者主催のワインイベントとコラボする

興味関心〜検討

  • ワイナリーやぶどう畑、ワイン販売店などの情報を一元化した、ワイン観光マップを作る

来訪

  • タッチポイントを増やすために、観光案内所や宿泊施設、飲食店での試飲提供を行う
  • 観光ニーズの高い「食」とワインを掛け合わせた企画を実施する

リピート・ファン化

  • 既存のイベント(ワインや地場食材を楽しめる秋の「おごっそに乾杯!」)に加えて、閑散期にも独自イベントを実施する
  • 臨時バスやタクシーなど交通網を整備する
  • 限定イベントやクーポンなどのインセンティブを設けた会員制度を作る
一部メンバーはZoomで参加

上記の提案に加えて、ぶどう栽培やワイン醸造関連の「体験プログラム」に特化して話し合う時間も設けられ、主に農家やワイナリー関係者からの意見を聞きました。

ワイナリー関係者からは「年間を通して収穫期以外はラベルを貼る作業なら手伝える。醸造の繁忙期は猫の手も借りたい状況でお客さん対応は難しい」、旅館からは「ぶどうの新芽を天ぷらにして食べると、ふわっとぶどうの香りがする。そのとき、その場でしか味わえないものがある」という意見がありました。
また、ぶどう農家からは「ワイヤー張りを手伝ったもらったときに、『これにぶどうが巻き付いていくんだ』と感動してくれる人がいた。農家にとって地味で単純な作業でも、ワインが生まれるまでの工程に携われるのは価値になり得る」という提案もありました。

農業体験は収穫期に注目されがちですが、人手や忙しさなどを勘案しつつ、収穫以外の工程もコンテンツとしての可能性がありそうです。

追加ヒアリングと畑での作業体験

およそ3時間、スライド80枚分の提案をもって中間提案はお開きとなりました。しかし、これで訪問は終わりません。そのままの足で役場職員や村民へのヒアリングに臨み、翌日はぶどう畑での作業体験、さらにまたヒアリングと充実した2日間を過ごしました。

商店、飲食店、農家、地域おこし協力隊など地元の人たちからヒアリング
農家が剪定した後に、ワイヤーに絡んで残っている枝を取り外す作業を体験

今回の作業体験は収穫に比べるとたしかに“地味”でしたが、それでもみなさん熱中。取り外した枝を花瓶に挿しておくと芽が出るかも、ということでお土産に持って帰る方もいました。

さて次はいよいよ最終提案。1月末までラストスパートをかけます。

【プロジェクト進展】
10月12日〜12月11日 週1回ペースでの定例ミーティングと、調査・分析・追加ヒアリングなど
12月12日 現地訪問1日目(中間提案)
12月13日 現地訪問2日目(農作業体験・ヒアリング)

→最終話へ