1.プロボノの基礎知識(行政職員のためのプロボノセミナー)

認定NPO法人サービスグラント 代表理事 嵯峨 生馬

嵯峨 生馬
認定NPO法人サービスグラント 代表理事
1974年、神奈川県横浜市生まれ。
株式会社日本総合研究所研究員を経て、2005年、日本におけるプロボノの草分けとして「サービスグラント」の活動を開始。2009年にNPO法人化、代表理事に就任。企業人等の経験・スキルを活かした社会貢献活動「プロボノ」のコーディネートを通じて、NPO・地域団体等の基盤強化を支援。幅広い企業・行政・財団等と連携し、さまざまなプロボノ活動のモデルの開発に取り組んでいる。
著書に『プロボノ ~ 新しい社会貢献、新しい働き方』(勁草書房 2011年)ほか。

「プロボノ」という言葉の語源は「プロボノプブリコ」です。「プロ」は「〜のために」、「ボノ」は「グッド」の意味で、英語では「フォーパブリックグッド(公共善のために)」の意味で、仕事で培ってきた経験やスキルを活かして社会に役立てていきましょう、という意味です。
もともとは弁護士の間で広がってきた言葉ですが、ここ最近では色々な企業にお勤めの方々が、様々な経験やスキル、ノウハウ、専門知識を活かした社会貢献をしていく動きがあり、プロボノという言葉が知られるようになってきています。

プロボノによる支援の位置づけ
プロボノによる支援の位置づけ

プロボノは、NPO等の団体の日常的な活動に対してマンパワーを提供するというよりは、団体の土台となる運営基盤を強化します。情報発信や組織作り、資金調達、事業戦略などを、様々な社会人がお手伝いをする点が特長です。

運営するサービスグラントとは
運営するサービスグラントとは

私たちサービスグラントは、プロボノとして活躍したい社会人と、プロボノのサポートを得て地域づくりや社会課題解決に取り組んでいきたいと考えるNPOや地域団体、この両者を繋ぎ、最終的には形のある具体的な成果物を団体にお届けする、その一連の流れをコーディネートしています。

2005年の活動開始から17年目、これまでにプロボノ参加者4,736人、プロジェクト1,056件の運営実績があり、東京都、大阪府、青森県などの自治体や、さまざまな企業と共に、地域課題解決、社会課題解決に取り組んでいます。

プロボノの成果物の例としては、団体・地域が対外的により仲間や支援者を増やしていくためのウェブサイト制作やパンフレット制作といった情報発信支援、団体の業務フローや運営マニュアルを作っていく業務改善支援、対外的に活動の魅力を発信して寄付金を集めるファンドレイジング支援、中長期事業計画立案や商品サービス等に関するマーケティング調査等の事業戦略支援などがあります。

プロジェクトの標準的な流れ
プロジェクトの標準的な流れ

プロボノプロジェクトは、約1~6か月間ぐらいの期間に渡って、5~6人で1つのチームを編成し、それぞれの得意分野を活かしながら、支援内容ごとに定めたフェーズに沿って進めていきます。ビジネスさながらの進め方で、地域の課題解決に取り組んでいく点も特長の一つです。
参加される皆さんは、個人のボランティアとしてプロボノ活動に参加され、ふだんの仕事と両立しながら週末や平日夜といった時間でプロボノ活動に取り組んでいます。

どういった動機で参加されるのか。その背景には例えば「働き方」が変わってきたことが挙げられます。人生100年時代の中で、会社だけではない色々な引き出しを持ちたいとプロボノに関心を持つ方も増えています。また、社会課題に対して目が向く人も増えています。特にSDGsという言葉が広がっていますが、SDGsを意識した経営の中で、社会課題に興味を持つ人が増えていると感じます。

プロボノワーカーは、働き盛りの世代
プロボノワーカーは、働き盛りの世代

プロボノに参加される方たちの多くが働き盛りの世代です。この世代の方たちは、あまりボランティアをしないと今までは言われていましたが、プロボノ活動には幅広い職種・業種から数多くの方々が参加されています。
主に大都市、東京や大阪のNPO・地域団体を支援先に取り組んできましたが、プロボノを必要とするニーズは決して都市部に限るものではありません。
そこで、2011年に『ふるさとプロボノ』が生まれました。

ふるさとプロボノは、主に都市部で活躍しているビジネスパーソンが、地域づくりに取り組んでいる団体やコミュニティを応援するプロボノです。現地の方々と日常的に顔を合わせることは難しいので、プロジェクト中1~2回程度、極めて内容の濃い1泊2日~2泊3日の現地体験と交流の時間を過ごしています。
朝から晩まで地元の方にお会いして情報収集をしながら、地域で時間を過ごして、現地でしかできないことを体験することで、単なるアイデアに留まらない地域の役に立つ具体的な成果物を地域に提供しています。プロジェクトが一旦完了した後も、プロボノ参加者とその地域とのつながりが維持されていき、新しい「関係人口」として継続的な交流に発展することもあります。

地域コミュニティや団体にとってのメリット
地域コミュニティや団体にとってのメリット

ふるさとプロボノは、地域コミュニティや団体の皆様にとっては、外部の視点を取り入れながら地域のことを改めて考えるきっかけになります。さらに、地域活動ですぐに使える具体的な成果物が手に入ります。パンフレットができればその日から配って何か活動を起こしていける、こうした即効性のある支援を行っているところも大きな特長です。
また、外部の人たちが関わり、持続可能な地域づくりに向けた道筋が見えるということも言えるのではないかと考えています。

支援というと一方的な印象があるかもしれませんが、都市部の皆さんが地域団体と共に、新しく地域づくりを進めていく仲間として関わる姿が、ふるさとプロボノによって日本各地で見られている風景です。
ふるさとプロボノの中には、色々な要素があり、都市部の人にとっては、越境学習にもなりますし、個人の視野や経験の広がりにもなります。地域の人からは、新たな関係人口の創出の方法でもあり、まちづくりや地域活性化の具体策にもなるなど、これまでのふるさとプロボノの取り組みから、多様な可能性、多面的な効果があると実感しています。

※本記事は2021年7月15日時点の情報を基にしています。
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