4.事例発表2 高山村観光協会のチャレンジ

藤沢 勉(ふじさわ つとむ)氏 信州高山村観光協会

【事例紹介】
藤沢 勉(ふじさわ つとむ)氏
信州高山村観光協会
信州高山村において温泉旅館や飲食店、小売店、組合などと共に魅力ある観光地づくりを進める。果樹栽培に適した地域でりんごやぶどうに加えて、ワイン用ぶどうの栽培が進む。伊勢志摩サミットにて高山村産ブドウによるワインが提供されたことで急激に注目を浴びた。ワインが重要な観光資源となると認識しながら、地域内で連携した方策を打ち出すことに苦慮していた矢先、2020年のふるさとプロボノ in 農山漁村に参加。ワインを中心に村を繋ぐ具体的な施策づくり(事業計画立案)にプロボノチームとともに取り組んだ。プロジェクトの様子はこちらから

 

図司 直也(ずし なおや)氏  法政大学 現代福祉学部教授
【モデレーター】
図司 直也(ずし なおや)氏
法政大学 現代福祉学部教授
1975年愛媛県生まれ。東京大学農学部を卒業し、東京大学大学院農学生命科学研究科農業・資源経済学専攻に学ぶ。2005年に同研究科博士課程を単位取得退学。博士(農学)。財団法人日本農業研究所研究員、法政大学現代福祉学部専任講師、准教授を経て、2016年より現職。農林水産省・新しい農村政策の在り方に関する検討会委員、中山間地域等直接支払制度に関する第三者委員会委員、(財)地域活性化センター・地域リーダー養成塾主任講師等、地域振興・人材育成に関するアドバイザーを歴任。専門分野は、農山村政策論、地域資源管理論。
主な著書は、『就村からなりわい就農へ』(筑波書房)、『地域サポート人材による農山村再生』(筑波書房)、『プロセス重視の地方創生』(共著:筑波書房)、『内発的農村発展論』(共著:農林統計出版)、『人口減少社会の地域づくり読本』(共著:公職研)、『田園回帰の過去・現在・未来』(共著:農山漁村文化協会)、『農山村再生に挑む』(共著:岩波書店)など。

藤沢:長野県、信州高山村観光協会でのふるさとプロボノの事例を発表します。「ワインを中心とした高山村の新たなファン作り」を目標に掲げ、プロボノワーカーさんと一緒に、その実現に向けた取組みを展開しました。

高山村の課題と、プロボノで目指した成果

高山村の人口は約7,000人、長野県長野市の東約20キロのところにあり、村の半分以上が上信越高原国立公園に属している、自然の豊かな農山村です。
扇状地という土壌の特性や、雨が少ない気象条件がワイン用ぶどうの栽培に向いているということで、20年ほど前からワイン用ぶどうの栽培が進んでいます。2016年の伊勢志摩サミットで提供されたワインの原料産地であることなど、ワイン用ぶどうの産地としての評価が高まっています。現在ワイナリーが5軒創業していて、ワイン用ぶどうを栽培したいと夢を抱いて移住する方も増えています。

このようにワイン用ぶどうの栽培が盛んになり、高山村産のワイン生産も増えている中、次のステップとしてワインを有力な観光資源にしていきたいと思っていましたが、関係する業種の皆様とうまく連携ができておらず、具体的な施策に踏み出せない状況にあったところ、ふるさとプロボノを紹介いただきました。

村の課題とプロボノ事業で目指した成果
村の課題とプロボノ事業で目指した成果

プロポノチームと村の関係者が初めて顔をあわせたキックオフミーティングの中で、まず何をテーマとするのか、何を成果物とするのか、プロジェクトの意識をしっかり合わせました。その際、「隠さず悪いところも全て含めて、皆さんが見たままの高山村の姿、そして思ったままの提案をしてください」とお願いしました。

プロボノ支援内容とエピソード

プロボノ支援内容
プロボノ支援内容

支援内容は、①ニーズの把握、②調査・仮説の構築、③村で実現可能な方策への落としこみ、そして④最終成果物と、ステップを踏みながら進んでいきました。
最終成果物は、「ワインをテーマに、多様な事業者が一体となってファンづくりを進めていくための具体施策と実行プランの提案」となります。

6名のプロボノワーカーの皆さんは、業種や職種は異なっていましたが、それぞれに大変高いスキルを持っていて、立派な成果を導いたチーム力にも感心させられました。
こちらが数字で見るプロボノ活動の実績になります。

数字でみるプロボノ活動
数字でみるプロボノ活動

スキルの高さにも驚きましたが、ミーティング回数や活動時間、そして提案書の枚数などに表れているように、大変エネルギッシュに活動をしていただきました。

ここからは、プロボノ活動のエピソードをご紹介します。

エピソード1 出会い(現地訪問)
エピソード1 出会い(現地訪問)

まず、10月14日にプロボノワーカーの皆さん全員に、高山村に来ていただきました。村の課題とプロボノの目標を明確にするキックオフミーティングをしっかり行い、その日の夜の歓迎の夕食会では、地元のジビエでバーベキューを行い、ワインを飲んでいただきました。
次の日はワインぶどうの収穫体験も実際にやっていただきました。
この2日間の日程でかなり打ち解けて、本音で話せる関係ができたんじゃないかなという気がします。

エピソード2 プロジェクト折返し(中間提案)
エピソード2 プロジェクト折返し(中間提案)

2カ月後の12月14日に中間報告会を行いました。コロナの関係でオンラインミーティングでの出席となったプロボノワーカーさんもいらっしゃいましたが、村側は旅館や農家の関係者などが出席しまして、本気の議論ができました。

エピソード3 最終提案
エピソード3 最終提案

そして1月31日に最終報告会となりました。全員で成果を分かち合うつもりでいましたが、残念ながらコロナの影響でオンラインとなりました。
そんな状況でしたが、最終報告書の内容は質もボリュームも大変素晴らしいものを提案いただきました。提案をいただいた私たちは、「ここまでやってもらったら、もう実践するしかないね。」と、そんな気持ちになったことを思い出します。

プロボノの感想と、その後のつながり

プロジェクトが完了した後に、プロボノワーカーさんから感想をいただきました。
「仕事では得ることのできない出会いや学びがありました。」「旅行や出張で訪れるのとは違った、人や地域との深くて広いつながりを得られました。」といただきましたが、プロボノワーカーさんのそんな気持ちがこちらにも伝わってきました。
「かけがえのない出会い、新しいふるさとの友達ができる。」といった感想もいただきましたが、私たちもビジネスのお付き合いとは異なって、プロボノの温かいつながりを感じます。

高山村側のメンバーの感想では、「プロボノのみなさんの意欲、洞察力、チームワーク、仕事の質の高さに感動。」という声があり、こちらの予想を遥かに超えた成果物をいただきました。
「外から光を当てて、キラリとヒカル宝石をたくさん見つけてくださった。」という感想もあり、私達とは違った目線から村の良さというものを引き出していただきました。

プロジェクトその後
プロジェクトその後
プロジェクトその後
プロジェクトその後

プロジェクトのその後ですが、ありがたいことに引き続き村との御縁を大切にしていただいています。プロボノをきっかけに、村に愛着を持っていただき、私たち村の取組みを温かく見守っていただき、大変嬉しく思っています。
4月16日には、3名の方が再び村を訪れてくださり、村内での新しい体験作りのモニターをしていただきました。

ふるさとプロボノには、ビジネスとは異なった温かいつながりを感じます。ボランティアゆえに、その地域を応援しようという気持ちが、ストレートに伝わってくるのかもしれません。
それから都会の人の目線で、ここにしかない田舎の良さを発見していただきたいと思っています。

現在、プロボノの提案をいただいて具体的な取組みを進めています。

現在の協会の取り組み
現在の協会の取り組み

10月の実施に向けて、ワインぶどうの収穫体験と温泉旅館、村内観光資源を絡めたモニターツアーの計画を策定中です。観光協会のホームページの改訂や、プロモーション動画の作成も進めています。

ふるさとプロボノに参加して一番感じたことは、小さな田舎と思っていたこの高山村の価値を、プロボノの皆さんに改めて良さを発見して教えていただき、支持・支援をしていただいたことで、私たち村側の地域への自信につながりました。

今回のプロボノは「高山村の新たなファン作り」というテーマで進めてきましたが、プロボノの皆さんが「まず自分たちがファンになったよ、応援しているよ。」と言っていただいたことが、一番の収穫だったかもしれません。
当初の自分たちの予想を遥かに超えた満足感をいただきました。

プロボノとビジネスの関わりの違い(クロストーク)

図司:先ほどビジネスと違ってという話もありましたが、コンサルティング会社や観光関係のマーケティング会社に調査業務を発注して、報告書を作ってもらう選択肢もある中、プロボノを選んだことはすごいチャレンジングだなという気もしましたが、このあたりの背景や経緯は?

藤沢:昨年の夏頃に初めてプロボノを知りましたが、実はそれまでにコンサルタントさんにお願いしたこともありました。プロボノにこういうことを期待しようと最初から思っていたわけではないですが、一緒にやっていく中で、私たちと同じ目線、私たちの側に一緒に立って課題に悩んで、一緒に何をすればいいのか探していただいた。それを元に、スキルを活かした提案をしてくださったプロセスは大変良かったという気がしています。

スピーカーの藤沢氏(左)とモデレーターの図司氏(右)
スピーカーの藤沢氏(左)とモデレーターの図司氏(右)

図司:地域の皆さんの受け止め方も、やっぱり違いましたか。

藤沢:そうですね。業種が違うと観光や商売に対する考え方は異なるんですが、小さな村ですから、面と向かってその辺りの意見の交流ができないとか、遠慮している部分があるんです。そこにズバズバ入ってもらった部分が良かったのかなと思います。

図司:地域の中で連携が取れていないという話もありましたが、本音ベースで話し切れず、何か起こすときの壁になっていたところを、プロボノの皆さんが溶かしてくれた感じでしょうか。

藤沢:そうですね。先ほどの図司先生のお話にもあったように、いきなり解決策に飛びついても難しい。まずはそこの前段で、みんなで課題を共有したり同じ目線に立った後に進めていく、という話は共通していると感じました。

図司:先ほどのスライドで、数字でプロボノ活動を表現するところがありましたが、地方創生のKPIでは表現しきれない「地域を思った時間」や「新しい人との出会い」などを挙げられていたところが印象的でした。

藤沢:プロボノワーカーの皆さんも「いっぱいやったんだな。」っておっしゃっていました。
成果物のボリュームも118ページあったのですが、これをビジネスでコンサルを頼むと、もっと凝縮して理論立てたものになってくると思うんです。でも私からすれば逆に、そのままパカっといただいたところに凄い熱量を感じて、心を動かされましたね。

図司:報告書で少しまとまって出てくるよりも、色々なものがありのままで出てきて、ありのままのところでやり取りをして共有したところが、成果としては大きいということなんでしょうね。

※本記事は2021年7月15日時点の情報を基にしています。
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(都市の社会人向け)