5.パネルディスカッション

スピーカー

  • 法政大学 現代福祉学部教授 図司 直也 氏(上列左)
  • 青森県 環境生活部 県民生活文化課 総括主幹 上明戸 健一氏(上列右)
  • 信州高山村観光協会 藤沢 勉 氏(中列左)
  • 認定NPO法人サービスグラント 代表理事 嵯峨 生馬(中列右)

モデレーター

  • 尼崎市役所 こども青少年課 係長 江上 昇 氏(下列左)
  • 認定NPO法人サービスグラント 理事 岡本 祥公子(下列右)

プロボノによって、生き方の選択肢が増える

江上: 図司先生のお話や信州高山村の藤沢さんの発表など、今日みなさんからいただいたプロボノに関するお話の内容について、まずは感想を聞かせてください。上明戸さん、いかがでしょうか。

上明戸:青森でも移住促進を図る取組みはありますが、やっぱり一足飛びで移住はなかなか難しいと感じているところです。図司先生のお話にもあった通り、共感をしてだんだんステップを踏んでいくところが、私もすとんと腑に落ちたところでした。そういう意味でプロボノは、移住が目的ではないですが、地域のことを知るきっかけとして提供することのできる、すごく良い仕組みだと思っています。

しかも、一人じゃなくて色んな方々が一緒に一つの目標に向かって取り組む中で、地域の課題を、自分たちが地域に出向いて見聞きして感じて、その地域の方々と一緒に課題解決に取り組むことが自然にできる仕組みになっています。
首都圏から参加された方も、青森県のことにすごく関心を持つようになって、一つの生き方として、将来地方で活動や仕事をすることも視野に入ったという声も聞いたことがあるんですよね。なので、生き方の選択肢が増えるというのも、大きな特徴かなと感じていました。

藤沢:上明戸さんのお話のように、来ていただくということが凄く大事だと思うんですね。高山村は小さな村で知名度もあまり高くないので、良さというのは来ていただかないと分からない。今回もプロボノの皆さんに来ていただいて、良さを感じていただけた。今後の観光の方針としても、来ていただくことで長く付き合っていただく形を目指していて、そういった意味でプロボノはいいきっかけになったと考えています。

江上:図司先生のキーノートの中で、25年前ぐらいにはあまりなかった都市から農村への人の動きが最近出てきているという話がありましたが、プロボノワーカー側はどういう動機で参加していますか。

上明戸:青森の場合、例えば地元で参加された企業の方ですと、転勤されて青森に来たばかりで土地柄とかもよく分からないけれども、ボランティアの気持ちは元々持っていて、「地域の方と関わりを持てるボランティアとしてプロボノを知って参加してみました」という方もいらっしゃいました。また、「自分が住んでいる地域に、実際どういう活動をしている団体があるのか知りたい」という思いの方もおりましたね。

江上:首都圏から参加された方の動機はどうでしょうか。

上明戸:東北で仕事をする機会はあったけれども、仕事だけじゃなくて青森のことをもっと知りたいし、青森にぜひ何かできればなという思いを元々持っていたところ、プロボノで参加する機会があることを知って、「これは行くしかないな」と思って参加したという話を聞いて嬉しかったです。単なる観光ではなくて、というところが動機としてあったと思います。

藤沢:直接動機の話はしていませんが、頑張って支援するという気持ちはひしひしと伝わってきました。皆さん本当に好奇心旺盛ですね。あれも知りたい、これも知りたい、といった部分がとても前向きに出てきていました。猟師の方を紹介したら、「今度猟の体験ツアーに行きたい」というプロボノワーカーさんがいらっしゃいました。皆さんの行動力と好奇心は本当に凄いと思います。

江上:図司先生は参加する人たちの動機をどのように見ていらっしゃいますか。

図司:私が生まれたのは四国で、じいちゃんばあちゃんがいて、お盆とか正月に帰省をする習慣があるんですよね。今回の話で言うと「ふるさと」を持っている側だと思うのですが、今どんどん世代が下りてくると「ふるさと」がなくなってるんですよね。首都圏にお父さんお母さんが出てきて、二世三世になってくると盆正月も帰省をしない人がだんだん増えているわけです。

そういう人たちからすると、地方に行くきっかけがないですよね。旅行で地方に行くか、そうでなければ東京にいるか、となって、帰省やプロボノのように、暮らしの部分に触れながらステイする地方との関わり方って、なかなかないですね。
うちの学生も、地方出身者と話をすると色んな話すネタもあるし、当然大変な話もするんだけども、首都圏出身の学生にとっては、そういう話ができることや、そこに根ざしてるものがあるということへの憧れや、大事にしないといけないといった思いがあるようです。都市型災害など色々なものが出てきて都市にいることの価値観がちょっと揺らいでいる中、そうじゃない住まい方や地域の見方とか関わり方みたいなものに、まず触れてみたいというニーズは高まっているじゃないかなと感じます。

公務員のプロボノ参加

江上:公務員の副業・兼業は制限がありますが、プロボノへの参加はどのように整理されたのでしょうか、と質問をいただいています。青森はいくつかパターンがありましたか?

上明戸:プロボノを副業としては考えていなくて、あくまでもボランティアとして位置づけています。青森県で実施した1年目は、部内で職員を募って「職員研修」としても実施しました。本業の一部として、外に出て地域課題に触れること自体が人事研修となり、職員自身のスキルアップにもつながることを見据えて実施しました。4人が1チームで参加して、勤務時間の中でも活動しましたし、勤務時間外の土日の活動もありました。ただ研修ですので、服務規定に則って、休日参加した分は振り替えるなど制度も活用しました。

2年目以降については研修ではなく一般の参加者として、企業や民間の方と一緒の立場でやりましょう、ということで参加者を募り、私もそのうちの一人として参加しました。その場合は、勤務時間外や土日のプライベートの時間を使って活動をします。そうした形でも募集すれば参加される方もいますので、いまは研修はやらずに自然体で手を挙げてプロボノに参加いただいている状況です

つなぎ直しの役割としてのプロボノ

嵯峨:キーノートで図司先生から、農村部であっても、意外とお互いのことを知らないし何が良さなのか分からないという話がありましたが、高山村にプロボノが入ったことで、藤沢さんは何か感じられたことはありましたか。

藤沢:図司先生のお話のように、田舎は田舎なりに連携が薄れて来ていますし、農業に携わらない人が増えてきました。逆に、外から来られる人の方が、農業とか山とか自然に関心が高いです。先程、好奇心というお話もしましたけども、そうした方にどんどん田舎に目を向けていただくのは、すごくありがたいことです。

図司:プロボノの皆さんもそうでしょうし、学生や地域おこし協力隊の皆さんもそうだと思いますが、『つなぎ直しの役割』と私は表現しています。地域の人たちが一見するとつながっているようで、実は接点が切れているところを、間に立ってつないでいく。あるいは、関係に変化がなくて凝り固まっているところを、色んな形で関わって解きほぐしていく。
明治大学の小田切先生は『交流の鏡効果』という表現をされますけど、自分の姿を映し鏡のようにして、外から関わってくれた人たちが表現してくれています。だから悪いところも含めて見せられるわけですけど、地域の皆さんがちゃんと真剣に向き合うところがあります。高山村も移住者の方が入って、風通しが多分いいのだと思います。プロボノの皆さんが入って一緒になってもやりやすい環境があった。逆にそれがないと、なかなかいきなりプロボノの方が入っても、ちょっと骨が折れるところがあるような気もします。

地域を巻き込むプロボノの有効性

江上: パブリックインボルブメントとしてのプロボノの活用について、セミナー参加者から質問をいただいています。図司先生、地域コミュニティが地縁で作られてきたところからテーマ型活動に移っていく中、巻き込みの一手法としてのプロボノの有効性はいかがでしょうか。

図司:少し研究めいた話でいくと、地域の人たちが主役で内発的発展やボトムアップしていく話はよくされてきましたが、地域の状況はなかなか厳しくなっている中で、そこを地域の人だけで頑張れというのも、そろそろ限界に来てるんじゃないかと、特に農村部や過疎地域では思うんですね。
そのときに、上明戸さんや藤沢さんの話にもあるように、外の人が関わることで地域の人が必要なところを一緒になって作っていく方が、むしろ今の地域づくりとしては王道になってきていると思います。

今までは自分たちでしっかりやってきたし、地域の財産としてやっていくという話はありますが、なかなか回せないときに、うまく『隙』を作って外の人たちとも一緒にやっていくように舵を切り直していく。結構勇気がいる話だと思いますが、地域の中で「そこ大事だね」と思う人たちから、うまく地元側から場をつくりながら、外からの風が入るような隙間を作っていくことが大事でしょうし、隙間が開いてくると色んなものが入ってくるので、地域の人たちがいいところをちゃんと選び取っていき、主体的な動きが出てくると次の高みに進んでいけるだろうという気がします。

だから少ない人たちで頑張ってゴリゴリやるっていうよりは、まさに関係人口の発想で、外の人の力をうまく組み合わせてやっていく。それも、お金がなくても志がある人たちとタッグが組める時代になっているから、地域側としては勇気づけられたんじゃないかなと思います。

プロボノ参加や導入を考えている方へメッセージ

江上:最後に、セミナーにご参加の皆さんにひとことずつお願いします。

上明戸:プロボノをすると色んな刺激を受けます。様々な方と関わって気づきがあったり、自分自身が変われたり、あるいは団体の方に新たな気づきがあって感謝されることもあります。そういうことを経験する、凄く素晴らしい場だと私は考えています。県内外の人たちが、地元の人たちの思いを汲んで、一緒に取り組むことで様々な相乗効果が生まれます。
成果物が得られるだけではない、たくさんの成果が心の中に残るのがプロボノだと考えています。

ぜひ皆さんも個人として参加することが、まず第一歩だと思います。組織として事業や施策に取り入れたい方は、地域活性化という視点だけじゃなく、女性活躍や子育て支援などプロボノには活用の幅があります。子育てをして社会からちょっと離れた人が、プロボノで社会と関わっていくことで、子育てしながら社会貢献できるという自信になって、それが復職の力になっていく。そうした『ママボノ』の成果も出ています。

藤沢:私は、ふるさとプロボノを導入した地域側として、ビジネスとは違った温かい思いとつながりをひしひしと感じました。それから、自分の地域を支援してくれる都会のファンを増やしていくことが高山村では大変大事なテーマですので、そういった意味でもまさに合致した仕組みだと思います。検討されている方には、ぜひ導入してみてくださいとお勧めいたします。

図司:コロナの状況の中で、移住定住やテレワーク、サテライトオフィスみたいな話が広がっていると思いますが、意外に遠くに行っていない状況が見えてきています。働く場所が首都圏なり都市部にあると、そこに引きずられるので、東京の周りも100km圏内ぐらいまでしか動いてないのですよね。
それは仮にテレワークで行っても、地域との縁はなかなかつながらないというところが大きいのだと思います。

むしろプロボノは、地域に行くという話があって、そこの人と出会って、地域に根差す話があるので、自分の持っているスキルとかポテンシャル、こんな仕事ができそうだといった感触を探っていく上では、非常に大事な要素だと思うんですね。
そういう人たちが移り住んでもらう方が、地域としても関係もできるし、周りの人も楽しみに一緒に接点ができてくるので、そういう人たちを呼び込む場づくりとしてプロボノを有効活用してみる、チャレンジしてみるというところはあると、今日全体を通して思いました。

嵯峨:プロボノは協働やパートナーシップの一つの形だと思います。主体として活躍していくのは、地域に根差して活動している人たちだと思うんですが、地域を盛り立てていく一つの仕掛けとしてプロボノがあります。
共生型社会は、『支援する』と『支援される』が行ったり来たりする社会だとも言いますよね。プロボノワーカーも支援しているようで、そこに関わることで自分の強みを発見したり、普段は仕事で褒められないけど人から感謝されたり、関わった自分も支援されるような関係ができています。
そういう循環が起こっていくのは、これからの日本社会において、大きな流れだと思います。

地域の課題解決にプロボノを活かす6つの方法
地域の課題解決にプロボノを活かす6つの方法

プロボノにもいろんなスタイルが考えられ、地域課題解決に向けて、地域内から参加する、地域外から参加する、公務員や企業から参加するなど、様々な組み合わせがあります。

地域の人が地域課題の解決に参加していく流れを作る仕組みや、『ふるさとプロボノ』として首都圏の人が外部から新しい風を吹かせることで地域のまとまりを作っていく関係人口の取組み、地元の人を主体としたプロボノチームに首都圏の人が入るハイブリッド型、市民協働が言われる時代にパートナーシップの技を磨いていく公務員研修、地域の中間支援組織がプロボノ運営ができるように伴走する取組みなど、バリエーション豊かに色々なことが考えられます。

何か新しいことにチャレンジしてみたい行政職員の方がいらっしゃったら、ぜひその夢を膨らませていきましょう。本日はありがとうございました。

※本記事は2021年7月15日時点の情報を基にしています。
→セミナーレポート一覧へ
←4.事例発表2 高山村観光協会のチャレンジ

 

(都市の社会人向け)