勝山市のリピーターを獲得するためのニーズを整理する「マーケティング基礎調査」 (3)

福井県勝山市

勝山市観光まちづくり 株式会社

マーケティング基礎調査

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再訪したいと思わせる勝山の魅力をリサーチ

プロボノチームがまず行なったのは、勝山でそれぞれが感じた魅力の整理。帰京を1日延ばして、勝山市の周辺の観光地をレンタカーで回った古山直也さん(なおやさん)は、「車だと周辺も気軽に回れるし、見どころがたくさんありました。勝山市だけで1日観光というよりは、勝山でちょこっと農業を体験して、周辺も観光するのがいいのではないでしょうか」

村山緑さん(みどりさん)は、初めて訪れた勝山の景色が印象に残ったといいます。
「空が広くて開放感を感じました。古い街並みは風情があり水もきれい。コンパクトなので散歩やサイクリングで回ると面白いと思います」

次に、まちづくり会社から提供された資料の分析に取りかかります。恐竜博物館の訪問者アンケートからは、関西圏・中部圏から、自家用車・バイクでの来訪が多いことが分かりました。また恐竜博物館を訪れた7割弱がファミリー層で、リピート率は4割。恐竜以外のコンテンツの必要性が改めて浮き彫りになりました。恐竜以外の勝山の魅力では、「自然」「景観」「食べ物」がキーワードとして浮上。この要素を生かしたコンテンツならニーズがあるのではと分析しました。

一方、道の駅の売上げデータから、和菓子の売上げが全体の50%以上を占めていることが判明。勝山の魅力に和菓子があるのかもしれないという仮説も立てられました。

さらに、全国の事例をインターネットで調査。農業体験をまとめたサイトや、田舎暮らし体験のサイト、他県のグリーンツーリズムのサイト、福井県内で行われている農業体験やワーケーションの現状についても調べ、参考にしました。

道の駅でもしっかりリサーチ
散歩に最適な勝山の街

 

6つの仮説

こうした調査から、ニーズのあるコンテンツとして次の6つの仮説アイディアが浮かびました。

①2〜3時間でできる気軽な農業体験
②粉挽きからそば打ち、食事までできる「そば打ち体験」
③福井名産・水ようかん作り体験(冬季限定)
④キャンプ客を対象にしたご当地野菜の提供や農業体験
⑤1週間ほど滞在する田舎暮らしのような旅
⑥ワーケーション

名物「越前そば」も体験コンテンツになるのでは?

 

農作業をほめられると農家はうれしい

11月初旬。この6つの仮説を持ち、ステークホルダーへオンラインでのヒアリング調査を行いました。対象者は、勝山市の商工観光・ふるさと創生課、農林政策課、すでに農泊・農業体験を受け入れている団体、特産のえごまを栽培している団体、里芋収穫体験の本多さん、道の駅「恐竜渓谷かつやま」の駅長の6人です。仮説の実現可能性や、新たな農産資源について聞き取りしていきます。

6人とも「農業体験」はぜひやりたいと同意見でした。商工観光・ふるさと創生課は、「農業体験は単なる観光よりも印象が深い。また夏休みの自由研究になるような体験があればファミリーに需要がある。ぜひやりたいコンテンツです」。農林政策課も「やりたいと思っていたところで、地域おこし協力隊と内容について掘り起こし中です。牧場でのバターづくりや、いちご狩りなどが案にあがっています」

農業体験を受け入れている団体からは、体験を提供したい農家は一定数いるとした上で、「長時間のものは農家側の負担も大きいので、1〜2時間のものがやりやすいのではないか」といった意見も。農家の本多さんは「参加する人が楽しいと思ってくれるなら、やってみたい」と前向きでした。特産のえごまを栽培している団体も、「短時間の農業体験なら可能です。普段、ほめられることがない農作業をほめられることも、景色がいいところだといわれることも、受け入れた農家はすごくうれしいと思います」と肯定的。このヒアリングを通して、里芋の他にも、枝豆、山菜、ブランドトマト「越のルビー(フルーツトマト)」など、年間を通じて農作業や採集を体験できそうな農産物の具体案が出てきたのも収穫でした。

一方、「農泊」については実行可能性が低いと、こちらも意見が一致。農林政策課は「農家としては宿泊は荷が重い」。農業体験を受け入れている団体からは「農泊を提供したい人はほとんどいませんし、ノウハウもありません。また宿泊を目的とするなら民泊の届けが必要なので、ハードルが高い」との指摘が。農家の本多さんも「空いている部屋は利用したいですが、農泊となると改修する必要があるので、果たしてどこまで投資するべきか」と、やはり踏み切れない課題を感じているようでした。

その他にも、「勝山の農家は、農業体験などの値付けに対して、価値を低く見積もる傾向にある。それは価値に対する自信がないのではないか」、「そば打ち体験はやりたいが、農政課・商工課・商工会議所の連携が必要になってくるかもしれない」といった意見も聞かれました。

再び訪れたくなるコンテンツには「農業体験」が有望!

こうしたリサーチの結果を元に、初回訪問から約1カ月後の11月16日、まちづくり会社への「中間提案」が行われました。

仮説アイディアの中から最も有望としたのは「2〜3時間でできる農業体験プログラム」です。そば打ち体験も含め、里芋の作付けや収穫、「越のルビー」の収穫、山菜採りなど、1年を通じてプログラムの提供が可能なこと、すでにサービスを提供している農家が存在していること、提供したいと考えている関係者が多いことなどがその理由です。

提案を聞いたまちづくり会社の今井さんにとっては、「そば打ち体験は盲点。地元では当たり前すぎで、それが、コンテンツとして魅力があるとは思っていませんでした」と、意外な案もあったようです。

こうした予測を元に、このあと道の駅利用者に行う「アンケート調査」の実施方法についても提案。ヒアリングをとおして実現可能性が高く、魅力的と感じた4つの体験「里芋作付け」「山菜採り」「そば打ち」「越のルビー収穫」の内容や値ごろ感を中心に調査していきます。

プロボノチームも再び勝山に足を運び、アンケートを行う予定です。果たして、どのような体験プログラムならば、勝山の魅力が伝わり再び訪れたくなるのか。アンケートの結果が楽しみです。

【プロジェクト進展】
10月4日 団体とプロボノチームの初顔合わせ(オンライン)
10月10日 プロボノチームによる勝山訪問・里芋収穫体験
10月11日 勝山訪問・団体とプロボノチームによるキックオフミーティング
10月4日〜11月2日 資料分析(まちづくり会社アンケート/道の駅売上げデータ)
10月18日〜10月30日 仮説立案
10月30日〜11月6日 ヒアリング調査(対象者6人)
10月24日〜11月中旬 アンケート準備
11月16日 中間提案会

→最終話へ

初めての勝山訪問を終えたプロボノチームは、帰京後さっそく、このプロジェクトの目標である観光リピーターを獲得するコンテンツの仮説づくりをスタートした。ミーティングはオンラインで週に1〜2度。進捗状況や意見の交換は、メールやLINEなどで毎日頻繁に行われた。

プロボノチーム

みどりさん(プロジェクトマネジャー)

ソフトウェア企画開発・新規事業のマーケティング。次のステージに向け、新しいフィールドを探したいと参加。

なおやさん(マーケッター)

エネルギー・モビリティ領域のインフラ開発・運営。地域活性化で社会貢献したいと参加。新しい出会いと新しい経験に期待。

ふくさん(マーケッター)

webメディアのプロダクトマネージャー。プロボノ活動は2回目で、前回、さまざまな分野の人と出会い、多くのことを学んだ。

おかじさん(マーケッター)

医療用医薬品メーカー営業。社会貢献に興味があり、チームでプロジェクト単位の仕事の仕方を学びたいと参加。

地域団体

地域概要

福井県北東部にある勝山市。古くは繊維の町として栄えた。全国から観光客が訪れる福井県立恐竜博物館があり、“恐竜のまち”として有名。

団体概要

勝山市観光まちづくり株式会社。2016年設立。観光協会に代わり、勝山市周辺の観光PR、人材育成や施設運営、商品開発やツアー開発などの事業に取り組む。

プロジェクト概要

観光客に「勝山市に再び来たい」と思わせる仕掛けづくり。「マーケティング基礎調査」によりニーズを把握、合致する観光資源について提案を行う。

初めての勝山訪問を終えたプロボノチームは、帰京後さっそく、このプロジェクトの目標である観光リピーターを獲得するコンテンツの仮説づくりをスタートした。ミーティングはオンラインで週に1〜2度。進捗状況や意見の交換は、メールやLINEなどで毎日頻繁に行われた。

プロボノチーム

みどりさん(プロジェクトマネジャー)

ソフトウェア企画開発・新規事業のマーケティング。次のステージに向け、新しいフィールドを探したいと参加。

なおやさん(マーケッター)

エネルギー・モビリティ領域のインフラ開発・運営。地域活性化で社会貢献したいと参加。新しい出会いと新しい経験に期待。

ふくさん(マーケッター)

webメディアのプロダクトマネージャー。プロボノ活動は2回目で、前回、さまざまな分野の人と出会い、多くのことを学んだ。

おかじさん(マーケッター)

医療用医薬品メーカー営業。社会貢献に興味があり、チームでプロジェクト単位の仕事の仕方を学びたいと参加。

地域団体

地域概要

福井県北東部にある勝山市。古くは繊維の町として栄えた。全国から観光客が訪れる福井県立恐竜博物館があり、“恐竜のまち”として有名。

団体概要

勝山市観光まちづくり株式会社。2016年設立。観光協会に代わり、勝山市周辺の観光PR、人材育成や施設運営、商品開発やツアー開発などの事業に取り組む。

プロジェクト概要

観光客に「勝山市に再び来たい」と思わせる仕掛けづくり。「マーケティング基礎調査」によりニーズを把握、合致する観光資源について提案を行う。

←(2)へ

再訪したいと思わせる勝山の魅力をリサーチ

プロボノチームがまず行なったのは、勝山でそれぞれが感じた魅力の整理。帰京を1日延ばして、勝山市の周辺の観光地をレンタカーで回った古山直也さん(なおやさん)は、「車だと周辺も気軽に回れるし、見どころがたくさんありました。勝山市だけで1日観光というよりは、勝山でちょこっと農業を体験して、周辺も観光するのがいいのではないでしょうか」

村山緑さん(みどりさん)は、初めて訪れた勝山の景色が印象に残ったといいます。
「空が広くて開放感を感じました。古い街並みは風情があり水もきれい。コンパクトなので散歩やサイクリングで回ると面白いと思います」

次に、まちづくり会社から提供された資料の分析に取りかかります。恐竜博物館の訪問者アンケートからは、関西圏・中部圏から、自家用車・バイクでの来訪が多いことが分かりました。また恐竜博物館を訪れた7割弱がファミリー層で、リピート率は4割。恐竜以外のコンテンツの必要性が改めて浮き彫りになりました。恐竜以外の勝山の魅力では、「自然」「景観」「食べ物」がキーワードとして浮上。この要素を生かしたコンテンツならニーズがあるのではと分析しました。

一方、道の駅の売上げデータから、和菓子の売上げが全体の50%以上を占めていることが判明。勝山の魅力に和菓子があるのかもしれないという仮説も立てられました。

さらに、全国の事例をインターネットで調査。農業体験をまとめたサイトや、田舎暮らし体験のサイト、他県のグリーンツーリズムのサイト、福井県内で行われている農業体験やワーケーションの現状についても調べ、参考にしました。

道の駅でもしっかりリサーチ
散歩に最適な勝山の街

 

6つの仮説

こうした調査から、ニーズのあるコンテンツとして次の6つの仮説アイディアが浮かびました。

①2〜3時間でできる気軽な農業体験
②粉挽きからそば打ち、食事までできる「そば打ち体験」
③福井名産・水ようかん作り体験(冬季限定)
④キャンプ客を対象にしたご当地野菜の提供や農業体験
⑤1週間ほど滞在する田舎暮らしのような旅
⑥ワーケーション

名物「越前そば」も体験コンテンツになるのでは?

 

農作業をほめられると農家はうれしい

11月初旬。この6つの仮説を持ち、ステークホルダーへオンラインでのヒアリング調査を行いました。対象者は、勝山市の商工観光・ふるさと創生課、農林政策課、すでに農泊・農業体験を受け入れている団体、特産のえごまを栽培している団体、里芋収穫体験の本多さん、道の駅「恐竜渓谷かつやま」の駅長の6人です。仮説の実現可能性や、新たな農産資源について聞き取りしていきます。

6人とも「農業体験」はぜひやりたいと同意見でした。商工観光・ふるさと創生課は、「農業体験は単なる観光よりも印象が深い。また夏休みの自由研究になるような体験があればファミリーに需要がある。ぜひやりたいコンテンツです」。農林政策課も「やりたいと思っていたところで、地域おこし協力隊と内容について掘り起こし中です。牧場でのバターづくりや、いちご狩りなどが案にあがっています」

農業体験を受け入れている団体からは、体験を提供したい農家は一定数いるとした上で、「長時間のものは農家側の負担も大きいので、1〜2時間のものがやりやすいのではないか」といった意見も。農家の本多さんは「参加する人が楽しいと思ってくれるなら、やってみたい」と前向きでした。特産のえごまを栽培している団体も、「短時間の農業体験なら可能です。普段、ほめられることがない農作業をほめられることも、景色がいいところだといわれることも、受け入れた農家はすごくうれしいと思います」と肯定的。このヒアリングを通して、里芋の他にも、枝豆、山菜、ブランドトマト「越のルビー(フルーツトマト)」など、年間を通じて農作業や採集を体験できそうな農産物の具体案が出てきたのも収穫でした。

一方、「農泊」については実行可能性が低いと、こちらも意見が一致。農林政策課は「農家としては宿泊は荷が重い」。農業体験を受け入れている団体からは「農泊を提供したい人はほとんどいませんし、ノウハウもありません。また宿泊を目的とするなら民泊の届けが必要なので、ハードルが高い」との指摘が。農家の本多さんも「空いている部屋は利用したいですが、農泊となると改修する必要があるので、果たしてどこまで投資するべきか」と、やはり踏み切れない課題を感じているようでした。

その他にも、「勝山の農家は、農業体験などの値付けに対して、価値を低く見積もる傾向にある。それは価値に対する自信がないのではないか」、「そば打ち体験はやりたいが、農政課・商工課・商工会議所の連携が必要になってくるかもしれない」といった意見も聞かれました。

再び訪れたくなるコンテンツには「農業体験」が有望!

こうしたリサーチの結果を元に、初回訪問から約1カ月後の11月16日、まちづくり会社への「中間提案」が行われました。

仮説アイディアの中から最も有望としたのは「2〜3時間でできる農業体験プログラム」です。そば打ち体験も含め、里芋の作付けや収穫、「越のルビー」の収穫、山菜採りなど、1年を通じてプログラムの提供が可能なこと、すでにサービスを提供している農家が存在していること、提供したいと考えている関係者が多いことなどがその理由です。

提案を聞いたまちづくり会社の今井さんにとっては、「そば打ち体験は盲点。地元では当たり前すぎで、それが、コンテンツとして魅力があるとは思っていませんでした」と、意外な案もあったようです。

こうした予測を元に、このあと道の駅利用者に行う「アンケート調査」の実施方法についても提案。ヒアリングをとおして実現可能性が高く、魅力的と感じた4つの体験「里芋作付け」「山菜採り」「そば打ち」「越のルビー収穫」の内容や値ごろ感を中心に調査していきます。

プロボノチームも再び勝山に足を運び、アンケートを行う予定です。果たして、どのような体験プログラムならば、勝山の魅力が伝わり再び訪れたくなるのか。アンケートの結果が楽しみです。

【プロジェクト進展】
10月4日 団体とプロボノチームの初顔合わせ(オンライン)
10月10日 プロボノチームによる勝山訪問・里芋収穫体験
10月11日 勝山訪問・団体とプロボノチームによるキックオフミーティング
10月4日〜11月2日 資料分析(まちづくり会社アンケート/道の駅売上げデータ)
10月18日〜10月30日 仮説立案
10月30日〜11月6日 ヒアリング調査(対象者6人)
10月24日〜11月中旬 アンケート準備
11月16日 中間提案会

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