地域交流の場が地元に根付くことに貢献する「うみのアパルトマルシェ」業務マニュアルづくり (3)

富山県氷見市

うみのアパルトマルシェ実行委員会

活動運営マニュアル

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いよいよマルシェ開催!

初回訪問から約1カ月後の11月14日、プロボノチームが再び、氷見を訪れました。翌日に開催される「うみのアパルトマルシェ」に参加するためです。この日も、氷見市有期職員で「うみのアパルトマルシェ実行委員会」(以下、実行委員会)の村上史博さんにヒアリング。出店基準や出店レイアウトで気をつけた点など、具体的な回答が引き出せました。

村上さんが語ったマニュアルのイメージは「“空手の形(かた)”のようなもの」。マニュアルに書かれるのは押さえておきたい基本であり、「実行委員がそれぞれ、目的や状況に合わせてカスタマイズしていけばいいと考えています」と村上さん。これが、マニュアルコンセプトの大きなヒントになりました。

11月15日、いよいよマルシェ開催日です。丸1日、村上さんに密着し調査するのは、内部環境分析班の清水(あっきー)さん、野口陽菜さん(のぐっちゃん)。最初の作業は朝6時半、村上さん自身が交通規制の看板を立てることからです。その後は、実行委員会と一緒に飲食スペースを設営したり、商店街の店舗から電源を借りたりなど、村上さんはどんどん作業を進めていきます。内部環境分析班の2人は、それを追いかけ、時には作業を手伝いながら、細かく行動を書きとめ、撮影。

一方、外部環境分析班の川口高史(ぐっち)さん、平林昌平(バヤシ)さんは、あらかじめ調査内容を細かく記したリストに周囲の状況などを書き込み、撮影します。

事前に準備したリストに情報を書き込む
村上さん(中央)の動きを追いかけて記録する

10時になり、あっという間にマルシェ開始。すぐに通りはお客さんでいっぱいになりました。親子、若い女性グループ、孫と一緒に来たと見られる年配の人も見られます。マルシェの開催時間中も挨拶や来場者対応をする村上さんの行動を、内部環境分析班が細かくチェックしていき、外部環境分析班は出店者にもヒアリングしました。

この日の来場者数は2,320人。完売する店もあり、村上さんの最後のマルシェは大盛況で終わりました。

「うみのアパルトマルシェ」当日、プロボノワーカーと実行委員会の村上さん
大盛況に終わった「うみのアパルトマルシェ」。Photo by Himigraph

 

プロボノチームは翌週のミーティングで、マルシェで得た情報を整理しました。現場を体験したことで、具体的なマニュアルの形をイメージできるようになりました。

マニュアルのコンセプトを提案

11月28日夜10時から、プロボノチームからの中間提案がオンラインで行われました。マニュアルのコンセプト提示が主な目的です。まず、これまで約2カ月の調査実績の報告を行いました。

内部環境分析班は、これまでのヒアリング結果を報告。村上さんへのヒアリング結果は、

  • マルシェの目的は「多世代が集まり、商店街への新規出店を促進するきっかけ」
  • 理想のマニュアルは「空手の形のように、形を参考に自分たちの考えで色を出していけるもの。複数人で協力できるように情報・ノウハウを残すもの」

また、実行委員会へのヒアリング結果は、

  • 今はまだ村上さんのように運営していくのは難しいが、マルシェに貢献したい
  • 開催の頻度や規模にこだわらず、みんなで分担して継続することが理想的

など、これまであまり共有されていなかった実行委員たちの思いを全体共有しました。

外部環境分析班は、類似のマルシェを比較分析した結果を報告。そこから結論づけた、うみのアパルトマルシェの強みは2つ。

  • 投稿数に対してフォロワー数が多いインスタグラムでの運用
  • ローコストでの開催

です。その上で、インスタグラムでの高い集客力を武器に、実行委員のそれぞれの立場をマルシェに生かす可能性を示しました。例えば、氷見市内で女性支援を行なっている実行委員には、若い子育て世代の多いマルシェ来場者や、出店者、当日の運営ボランティアまで含めた「サポーターコミュニティ」をつくり、それを本職の女性支援にも生かしたらどうか、というものです。

また、村上さんが大切にしてきたマルシェのコンセプトを守るため、誰もが出店者を選抜できる方法なども提案。うみのアパルトマルシェは、実行委員会のメンバー各々までを巻き込みながら進化させる価値があるとし、林昌平(バヤシ)さんが「2千人以上集められること自体すごいことです。うみのアパルトマルシェは氷見市の重要な資産といっても言い過ぎではないと思っています。この資産をお持ちの実行委員のみなさんにも、メリットが大きいのではないかと思いました。我々プロボノチームとしては、マルシェを良い形で続けられるようなマニュアル作成を通して、貢献できればと考えています」と結びました。

こうした内部・外部の調査分析を踏まえて、マニュアルのコンセプトは

①2020年11月15日のマルシェをケーススタディとするもの
②(マルシェに限らず)商店街活性化手段のひとつの“形(かた)”としても機能するもの

と提案しました。

さらに、プロボノチームと実行委員会が行う週次ミーティングを、引き継ぎプロジェクトと捉えてもらうことも提案。出店者リストの作成や今後のマルシェの形態など、引き継ぎに関して実行委員同士が話す場としても活用してもらおうというものです。ミーティングに巻き込むことで、スムーズな引き継ぎにも貢献したいと考えています。

提案を聞き終えて、村上さんは率直に思いをぶつけました。

「本当は自分でなんとか続けられないか考えたんですけれど、それはうまくいかなくて……でも、どんな形であれみんなに続けてもらいたい」

これまでにないストレートな表現に、心に響いた人も多かったようです。

プロボノワーカーとのやりとりが気づきを与えてくれる

村上さんは、この中間提案までの過程について「プロボノチームからヒアリングを受けて、毎回多くの気づきがあったんです。そういえばこういう気持ちでやってたな、と思い出すことがたくさんありました。同時に、実行委員会にも伝えられたので、とてもいい機会をもらったなと感じています」と振り返りました。プロボノワーカーが丁寧な観察やヒアリングを重ね、村上さんの思考と行動を引き出していく。コンセプトや業務の目的だけでなく、思いまでも共有できるようなマニュアルが見えてきました。これからは、マニュアルの細部を書き込んでいく段階に。「どんどん言語化されていくのがおもしろい」という村上さんをはじめ、皆が今後の展開を楽しみにしています。

【プロジェクト進展】
11月14日 氷見市2回目訪問1日目/ヒアリング
11月15日 氷見市2回目訪問2日目/うみのアパルトマルシェ開催
11月21日 プロボノチーム内のミーティング(オンライン)/プロボノチームと支援先のミーティング(オンライン)
11月28日 プロボノチームからの中間提案(オンライン)/プロボノチーム内のミーティング(オンライン)

→最終話へ

うみのアパルトマルシェ開催に合わせて、プロボノチームが氷見に2回目の訪問をした。実際にマルシェを観察、ヒアリングしたことで調査分析が進展。その後の中間報告では、これまでの調査分析の結果を踏まえ、マニュアルのコンセプトを2点に絞り込んで提案した。

プロボノチーム

やまちゃん(プロジェクトマネジャー) 

金融機関の総合職として海外子会社の経営管理を担当。2回目の参加。プロボノ活動の魅力は「会社じゃできないことができること」という。

あっきーさん(マーケッター) 

メーカーの人事マネジャー。東京五輪ボランティア延期をきっかけに参加。普段と異なる環境・立場での活動による気づきを期待。

ぐっちさん(マーケッター)

システム会社勤務。4回目の参加。「支援先とぐっと距離が近づく」瞬間にやりがいを感じて、プロボノ活動を続ける。

のぐっちゃん(マーケッター)

広告業界で審査業務を担当。プロボノ活動には以前から興味があり、転職とコロナ禍を機に、新しいことをやってみたいと参加。

バヤシさん(マーケッター)

フリーランスでキャリア相談を行う。個人としてのボランティア経験は多いが、チームとして問題解決する取り組みに挑戦したいと参加。

地域団体

地域概要

富山県の最西端、石川県との県境に位置する。人口約4万6千人(2020年11月1日現在)。富山湾に面し、漁業が盛ん。定置網にかかる出世魚ブリは、「ひみ寒ぶり」の名で有名。

団体概要

中心市街地の道路利活用事業として2017年に立ち上げ。「うみのアパルトマルシェ」の企画、運営、情報発信などを行なっている。

プロジェクト概要

実行委員会事務局として実務を担ってきた村上史博さんの退職にあたり、培ってきたノウハウ、コンセプトなども含めた運営マニュアルを作成。マルシェ継続のためスムーズな引き継ぎを目指す。

うみのアパルトマルシェ開催に合わせて、プロボノチームが氷見に2回目の訪問をした。実際にマルシェを観察、ヒアリングしたことで調査分析が進展。その後の中間報告では、これまでの調査分析の結果を踏まえ、マニュアルのコンセプトを2点に絞り込んで提案した。

プロボノチーム

やまちゃん(プロジェクトマネジャー) 

金融機関の総合職として海外子会社の経営管理を担当。2回目の参加。プロボノ活動の魅力は「会社じゃできないことができること」という。

あっきーさん(マーケッター) 

メーカーの人事マネジャー。東京五輪ボランティア延期をきっかけに参加。普段と異なる環境・立場での活動による気づきを期待。

ぐっちさん(マーケッター)

システム会社勤務。4回目の参加。「支援先とぐっと距離が近づく」瞬間にやりがいを感じて、プロボノ活動を続ける。

のぐっちゃん(マーケッター)

広告業界で審査業務を担当。プロボノ活動には以前から興味があり、転職とコロナ禍を機に、新しいことをやってみたいと参加。

バヤシさん(マーケッター)

フリーランスでキャリア相談を行う。個人としてのボランティア経験は多いが、チームとして問題解決する取り組みに挑戦したいと参加。

地域団体

地域概要

富山県の最西端、石川県との県境に位置する。人口約4万6千人(2020年11月1日現在)。富山湾に面し、漁業が盛ん。定置網にかかる出世魚ブリは、「ひみ寒ぶり」の名で有名。

団体概要

中心市街地の道路利活用事業として2017年に立ち上げ。「うみのアパルトマルシェ」の企画、運営、情報発信などを行なっている。

プロジェクト概要

実行委員会事務局として実務を担ってきた村上史博さんの退職にあたり、培ってきたノウハウ、コンセプトなども含めた運営マニュアルを作成。マルシェ継続のためスムーズな引き継ぎを目指す。

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いよいよマルシェ開催!

初回訪問から約1カ月後の11月14日、プロボノチームが再び、氷見を訪れました。翌日に開催される「うみのアパルトマルシェ」に参加するためです。この日も、氷見市有期職員で「うみのアパルトマルシェ実行委員会」(以下、実行委員会)の村上史博さんにヒアリング。出店基準や出店レイアウトで気をつけた点など、具体的な回答が引き出せました。

村上さんが語ったマニュアルのイメージは「“空手の形(かた)”のようなもの」。マニュアルに書かれるのは押さえておきたい基本であり、「実行委員がそれぞれ、目的や状況に合わせてカスタマイズしていけばいいと考えています」と村上さん。これが、マニュアルコンセプトの大きなヒントになりました。

11月15日、いよいよマルシェ開催日です。丸1日、村上さんに密着し調査するのは、内部環境分析班の清水(あっきー)さん、野口陽菜さん(のぐっちゃん)。最初の作業は朝6時半、村上さん自身が交通規制の看板を立てることからです。その後は、実行委員会と一緒に飲食スペースを設営したり、商店街の店舗から電源を借りたりなど、村上さんはどんどん作業を進めていきます。内部環境分析班の2人は、それを追いかけ、時には作業を手伝いながら、細かく行動を書きとめ、撮影。

一方、外部環境分析班の川口高史(ぐっち)さん、平林昌平(バヤシ)さんは、あらかじめ調査内容を細かく記したリストに周囲の状況などを書き込み、撮影します。

事前に準備したリストに情報を書き込む
村上さん(中央)の動きを追いかけて記録する

10時になり、あっという間にマルシェ開始。すぐに通りはお客さんでいっぱいになりました。親子、若い女性グループ、孫と一緒に来たと見られる年配の人も見られます。マルシェの開催時間中も挨拶や来場者対応をする村上さんの行動を、内部環境分析班が細かくチェックしていき、外部環境分析班は出店者にもヒアリングしました。

この日の来場者数は2,320人。完売する店もあり、村上さんの最後のマルシェは大盛況で終わりました。

「うみのアパルトマルシェ」当日、プロボノワーカーと実行委員会の村上さん
大盛況に終わった「うみのアパルトマルシェ」。Photo by Himigraph

 

プロボノチームは翌週のミーティングで、マルシェで得た情報を整理しました。現場を体験したことで、具体的なマニュアルの形をイメージできるようになりました。

マニュアルのコンセプトを提案

11月28日夜10時から、プロボノチームからの中間提案がオンラインで行われました。マニュアルのコンセプト提示が主な目的です。まず、これまで約2カ月の調査実績の報告を行いました。

内部環境分析班は、これまでのヒアリング結果を報告。村上さんへのヒアリング結果は、

  • マルシェの目的は「多世代が集まり、商店街への新規出店を促進するきっかけ」
  • 理想のマニュアルは「空手の形のように、形を参考に自分たちの考えで色を出していけるもの。複数人で協力できるように情報・ノウハウを残すもの」

また、実行委員会へのヒアリング結果は、

  • 今はまだ村上さんのように運営していくのは難しいが、マルシェに貢献したい
  • 開催の頻度や規模にこだわらず、みんなで分担して継続することが理想的

など、これまであまり共有されていなかった実行委員たちの思いを全体共有しました。

外部環境分析班は、類似のマルシェを比較分析した結果を報告。そこから結論づけた、うみのアパルトマルシェの強みは2つ。

  • 投稿数に対してフォロワー数が多いインスタグラムでの運用
  • ローコストでの開催

です。その上で、インスタグラムでの高い集客力を武器に、実行委員のそれぞれの立場をマルシェに生かす可能性を示しました。例えば、氷見市内で女性支援を行なっている実行委員には、若い子育て世代の多いマルシェ来場者や、出店者、当日の運営ボランティアまで含めた「サポーターコミュニティ」をつくり、それを本職の女性支援にも生かしたらどうか、というものです。

また、村上さんが大切にしてきたマルシェのコンセプトを守るため、誰もが出店者を選抜できる方法なども提案。うみのアパルトマルシェは、実行委員会のメンバー各々までを巻き込みながら進化させる価値があるとし、林昌平(バヤシ)さんが「2千人以上集められること自体すごいことです。うみのアパルトマルシェは氷見市の重要な資産といっても言い過ぎではないと思っています。この資産をお持ちの実行委員のみなさんにも、メリットが大きいのではないかと思いました。我々プロボノチームとしては、マルシェを良い形で続けられるようなマニュアル作成を通して、貢献できればと考えています」と結びました。

こうした内部・外部の調査分析を踏まえて、マニュアルのコンセプトは

①2020年11月15日のマルシェをケーススタディとするもの
②(マルシェに限らず)商店街活性化手段のひとつの“形(かた)”としても機能するもの

と提案しました。

さらに、プロボノチームと実行委員会が行う週次ミーティングを、引き継ぎプロジェクトと捉えてもらうことも提案。出店者リストの作成や今後のマルシェの形態など、引き継ぎに関して実行委員同士が話す場としても活用してもらおうというものです。ミーティングに巻き込むことで、スムーズな引き継ぎにも貢献したいと考えています。

提案を聞き終えて、村上さんは率直に思いをぶつけました。

「本当は自分でなんとか続けられないか考えたんですけれど、それはうまくいかなくて……でも、どんな形であれみんなに続けてもらいたい」

これまでにないストレートな表現に、心に響いた人も多かったようです。

プロボノワーカーとのやりとりが気づきを与えてくれる

村上さんは、この中間提案までの過程について「プロボノチームからヒアリングを受けて、毎回多くの気づきがあったんです。そういえばこういう気持ちでやってたな、と思い出すことがたくさんありました。同時に、実行委員会にも伝えられたので、とてもいい機会をもらったなと感じています」と振り返りました。プロボノワーカーが丁寧な観察やヒアリングを重ね、村上さんの思考と行動を引き出していく。コンセプトや業務の目的だけでなく、思いまでも共有できるようなマニュアルが見えてきました。これからは、マニュアルの細部を書き込んでいく段階に。「どんどん言語化されていくのがおもしろい」という村上さんをはじめ、皆が今後の展開を楽しみにしています。

【プロジェクト進展】
11月14日 氷見市2回目訪問1日目/ヒアリング
11月15日 氷見市2回目訪問2日目/うみのアパルトマルシェ開催
11月21日 プロボノチーム内のミーティング(オンライン)/プロボノチームと支援先のミーティング(オンライン)
11月28日 プロボノチームからの中間提案(オンライン)/プロボノチーム内のミーティング(オンライン)

→最終話へ